ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.14 このままでは

 

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肩の怪我

失意の中、冬の間はリハビリに務めた。左肩の怪我は重傷だが手術は回避された。怪我の数日後、全身麻酔までして手術室に入った後、執刀するシニアドクターが先送りにした。少し特殊な怪我。手術しなくても日常生活は送れるようになる半面、手術自体は少し大掛かりで、肩間接にネガティブな影響の出る可能性が有るらしい。

 

20代前半に右肩に同じ怪我をした時も専門医の勧めでメスは入れなかった。現在その右肩はまさに、怪我をする前と同じ能力は無いものの日常生活は問題無く送れるというもの。どうするか。とりあえず先送りにはされたが、先生の間でも、普通に生活できているのに大手術は必要ないという意見もあれば、当時と年齢も違うから必要と言う意見もあった。

 

最後は私次第ということになった。根本的な手術をするなら早い方が良いとのことだったが、違和感を取り除く程度の手術は将来でも出来るという。迷ったが、どちらも有りなら行わない選択が賢明だろう。手術は回避した。よくMoto GP などで、最終戦を普通に戦ったライダーが、オフシーズンに肩の大手術をすることがある。この手の怪我かなと思う。

 

リベンジを期する

2016年シーズンも同じ NLR New Comer 1,000 に参戦することにした。残留は問題ないとのことだった。当初の計画では 2年目は上のクラスで戦うつもりだった。タイム的にはトップを争えた。ただチャンピオンになる可能性は下がるだろう。確率重視の判断には一抹の後ろめたさを感じたが、レース人生で一度くらいチャンピオンになってみたかった。

 

スプリントレースに集中するため、転倒のリスクやマシンへの負担を軽減するため、耐久レースへの参戦は遠慮させてもらった。概ねのサーキットを知った今としては、土曜日に走り込んで慣れる云々も昨シーズンよりは必要ない。家族ぐるみの付き合いをしていた Host-it Racing チームオーナーの Andrew も、私の判断を受け入れてくれた。

 

バイクは同じ 2014 ZX10R。昔は年式が1年違えば別物だったが今はそこまでは無い。ただ今回のメンテナンスでは、転倒ダメージの修理に加えてエンジンのオーバーホールも行った。新たなカラーリングを施し、後ろのライダーから見える所に Japan ステッカーを貼った。海外で戦っているとどうしても日本人という意識が強くなる。周りもそう見るし。

 

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ちなみに、日本人ライダーの諸先輩方のおかげで、幸か不幸か、日本人としてパドックに居るだけで速いと思われる。これは本当。例えば、筑波選手権にスペイン人ライダーが参戦すると聞いたら、いや筑波の練習走行に来るだけだって、その彼が実際は普通のバイク好き留学生であっても、きっと皆さんは速い奴に違いないと思うだろう。同じである。

  

メカニックを持て 

3月の初め、なじみの深い Donington Park へシーズン初走行に行った。そしてそこで偶然、おととしトラックデイサービスで R6 を借り、SMT の Alec を紹介してくれた BSB チーム監督の Paul に会った(Vol.3)。あの後 Club Race に参戦して、最多ポール、最多優勝だったけど、ノーポイントレースが多くてチャンピオンになれなかったことを話した。

 

Paul は「一人でやってるのか? そのレベルで一人は無理だ。メカニックを持てよ」と言う。「そんなお金ないし、余計な責任が出て楽しめなくなる」と返すと、「勝てるライダーのメカニックをしたい奴なんて山ほどいる。彼らは自分の整備したバイクが勝つことが楽しみなんだから、お金もいらないし責任なんて無い」と言う。へぇ~、そうなのか。

 

Paul の言葉は心に残った。確かに、毎戦違うサーキット、毎戦 4レース、目まぐるしく変わる天候という環境の中で、自滅した感じは有る。とは言うものの、イギリス人メカニックを持てば、また新たなイギリス流のレース環境に慣れる必要が出てくる。かと言ってメカニックを趣味で楽しんでいる日本人なんて居るわけないし。。あっ、そうか!

 

ヘルパー現る

イギリスの日系週刊誌の掲示板でヘルパーを募ってみた。この狭いロンドンの日系社会にバイクレース好きなど居るわけないとは思ったが、何度か掲示すれば、ワーホリの若い男性などで興味を持ってくれる方が現れるかもしれないと考えた。すると1度目の掲示に、バイクレース経験のある、同世代の駐在員男性 2人から連絡をもらった。

 

2人とパブで会い、バイク談議で楽しい時間を過ごした。そしてそのうちの一人、40代の Max(現地用ビジネスネーム)が出来る限りレースに来てくれることになった。有難い。他のトップライダーにはメカニックや何人ものヘルパーが居る。依然として差は有るが、レース好きの日本人との活動は、どこか孤独だった活動自体が楽しくなるに違いない。

 

それにしても、狭いロンドンの日系社会へ向けたたった一度の掲示だった。しかも県人会募集、サッカーやりましょうなどと違う、ピンポイントな内容。なのに 2人もレース経験者から連絡を頂いた。ともに今は一流企業に勤める同世代の駐在員。日本には確かにバイクレースブームという時代があったのだ。映画「汚れた英雄」に始まったあの時代が。

 

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