ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.18 Round4 アングルシー

 

それでも好き

6月11-12日、前ラウンドで 2勝してようやく調子が上向いた次の舞台は、因縁のアングルシーサーキット(サーキット詳細は Vol.12 参照)。私にとっては去年、ほぼ手中にあったチャンピオン獲得が一瞬で消え失せた因縁のトラック。昨年のシリーズでは最終戦の前の第7戦だったが、今年は第4戦に組まれている。

 

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ラウンドを前に一度練習に行った。狭いコース幅、アップ&ダウン、そしてブラインドコーナーのある 、UK タイプのトラックではあるが、海を望むその開放感は格別。思いのほか、恐怖感も残っていなかった。ロンドンからそれなりの距離が有るのも遠征感がある。家族が一緒の時は旅行を兼ねることも出来る。やはり嫌いではない。

 

唯一、ここのサーキットの難は天気だ。大西洋に突き出た島は、西岸海洋性気候を地で行く。さらに、その気候帯と地形の関係からか、天気図では晴れでも、なぜか夜にサーッと雨が降ることが多い。サーキットでの朝は、濡れた路面に陽光がキラキラ輝く景色を見ることになり、そして徐々に路面が乾いて昼前には完全 Dry になる。

 

今回は第1戦のオールトンパークから週末に帯同し続けてくれた Max が来れない。ここは遠いので彼の月曜日の仕事に影響が出てしまうことを考えると仕方がない。列車ならば大丈夫かもしれないと直前まで可能性を探ってくれたが結局断念した。天候に不安のあるラウンドとしては痛いが、タイヤ交換のバタバタが無いことを祈る。

 

静かな満足感

果たして週末の 3日間は、やはり典型的なアングルシーウェザーになった。金曜日の練習はドライコンディションでホテルに帰っても雨は降っていなかったが、朝ホテルを出るときの道路は完全に濡れていた。7時ころサーキットに到着してコースを確認すると、完全にぬれた路面に陽光が輝いていた。予選は 9時から。路面はどんどん乾くと思うが 2時間しかない。Wet タイヤを装着した。

 

しかし 1時間前の時点でハーフウェットまで来た。トレッドタイヤ(溝の有る市販ハイグリップタイヤ)はウォーマーで温めてある。太陽はまぶしく輝き、空には雲一つない。決断のリミット 30分前を待たず変更の判断を下した。外したホイールはスリックタイヤと一緒にサービスに預けた。5分前にはツナギ、ヘルメットも装着して椅子に座る余裕が持てた。予選では転ばない程度にアタックして 3位、フロントロウ。全くもってOK。

 

予選後すぐにタイヤサービスにスリックに付け替えてもらったホイールを取りに行った。予想通り、昼前の Race1 は完全にドライになった。ただわずかなウェットパッチがあれば去年のようなことが起こり得る。Host-it 耐久チームの仲間にピットボードを出してもらった。後ろとの距離を測りながら走って 1.574秒差で優勝した。2位は Michael 。私のレース Fastest Lap に次ぐタイムを出していた Mark は、全 13周中の 8周目に転倒を喫した。

 

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テントに戻って次のレースの準備をする。このランドでは私のクラスは土曜日に 2レース有った。基本的に土曜日のスプリントは各クラス 1レースだが、陽の長い月は耐久のスタート時間を 15時ころに遅らせて、午後一にいくつかのクラスの Race2 が組まれる。日曜日の時間に余裕が出る分、私にとってはウェルカム。周りが新品タイヤに交換する中、私は時間の余裕を優先してそのままにした。

 

続く Race2 も 1.780秒差で Michael を抑えて優勝した。そのうしろの 3位 Phil Cullin (フィル クリン)は Michael から 14秒以上離れ、Mark は Phil からさらに 2秒遅れの 4位だった。完全ドライなら元来私が速い。15周ほど走っていたタイヤでも全く問題なく、再び記録した Fastest Lap は Race1 のそれを更新した。ただ、うれしさが爆発する感じとは少し違う、静かな満足感だった。

 

パドックは広くない。トイレへ行く途中、Michael のテントに、Mark と(おそらく)Phil が居るのが見えた。昨年は Dani のテントなどもよく訪れたが、今年は彼らとは日常会話をしたことが無い。たまにセカンドグループのライダーと話す程度でクラス内で疎外感がある。そうだ、早めにサーキットを出てお気に入りの Bangor の中華料理屋に行こう。空は雲一つない青空だったが、タイヤは装着せずにしておいた。 

 

疎まれながらも 

翌、日曜もやはり Wet な朝だった。ただ昨日と違って太陽がない。7時ころサーキットに着くと、迷うことなくバイクをウェット用にセットした。雨は午前中いっぱいまで残り、予選、Race3 ともウェットコンディションとなった。こうなるとここは一変して、冷たい風雨の吹きつける、海沿いの荒涼とした僻地と化す。覚悟を決めてバタバタせず、フルウェットの中を手堅く走って、予選、決勝ともに 5位で終えた。

 

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このレースでは、日頃見慣れないミッドランド出身のライダー達が上位に並んでいた。このコースは Wet でも意外にグリップが良いようだ。彼らはそのことを良く知っているのだろう。ここぞとばかりに果敢に攻め込んだと思われる。今回調子のよかった Phil もその一人。きっと午後は晴れるだろう。5位は決して喜べないが、転倒でもしてその後がメチャクチャになるよりははるかに良い。静かに満足した。

 

予想通り、午後の Race4 が始まる頃にはそれまでの厳しい景色から一転、まるで台風一過のような晴天になった。こうなるとこのサーキットは類を見ない美しさになる。上下の写真はほぼ同じ位置からの Shot。私もドライにさえなれば、ともかくコンペティティブに戦える。迎えた最終レース、Race4 でも、ウェットパッチに気をつけながら、2位の Phil を 1秒差に抑えて優勝した。Michael 3位、Mark 4位。

  

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レース後のバイクプール。Phil が横にバイクを着けて話しかけてきた。また嫌味でも言われるのかと思ったが、「いやー、(コーナー侵入で抜かれた後)ウィーリーしながら立ち上がられたら戦意も失うよ」と笑顔で言う。日頃は私を疎んでいるはず。今ラウンドは彼の成績が良く、特に最終レースでは私と張り合えたことから話しかけたい気分にもなったのだろう。「いやいや最後は危なかったよ。Good ride!」と返した。

 

らしからぬ完勝 

今回のラウンドは、4レースで 3勝することが出来た。Race3 も Dry だったら 4連勝も出来たと思うと、その点は少し残念に思える。ただ、これまで天気の安定しないラウンドでは様々なミスを犯して自滅していた。今回は Max が居らずに一人であったことを考えると上出来だった。

 

出走までの残り時間からタイヤ交換のリミット時間を適切に判断した。優勝した 3レースともウェットパッチの残るかもしれない状況で必要以上にプッシュせず、後続を僅差に抑えて優勝した。雨のレースの 5位という順位にも満足感を得た。日頃、完勝のラウンドは、予選、決勝ともに絶対的だが、今回は予選はそうでもなかった。自分らしからぬ形の完勝のラウンドだった。

 

2日間を通してメンタルが安定していて、高い集中力を保った状態だったように思う。土曜 2レース、日曜 2レースというスケジュールがそうした余裕を生んだのかもしれない。もしかしたら、疎まれている雰囲気が調子に乗ることを阻み、それによって平静を保てたのかもしれない。

 

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チャンピオンシップリーダーの Michael は、2位 2回、3位 2回で、今ラウンドも手堅く全戦表彰台に上ってその座をキープした。でも彼は、いつもスタートで私に先行した後に抜かれている。反対に彼はこれまで一度も私を抜いたことが無い。そのことはどう消化しているのだろう。今回の私の成功のように、彼もまた、ネガティブを受け入れることで平静に戦っているのかもしれない。

 

ともかく、これでチャンピオンシップランキング 1位の Michael と、2位の私との差は僅か 4.5ポイントになった。次は得意のシルバーストーン・インターナショナル。去年も全勝した。慣れや変なテクニックを要求されず、ロングストレートとフルブレーキングで思いっきり走れるのがいい。このままの調子で一気に逆転と行きたい。

 

               ーグリッドー   ー決勝ー
Race1           3rd            優勝
Race2         ポール           優勝
Race3           5th                5th
Race4           5th            優勝

  

 

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