ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.39 2020 BSB シルバーストーン ナショナル(Ducati Cup R3)

 

Silverstone National

シルバーストーンサーキットは、ロンドンから北に車で1時間半程のイングランド内陸中央部、空軍基地跡に広がる世界で最も有名なサーキットのひとつ。F1 や Moto GP の英国ラウンドもここで開催される。全長は GP コースが 5.891m、International コースが 3.619 m、National コースが 2.638 m。レースイベントや Trackday は 3種類のコースを同じような頻度で使う。フラットな敷地に長いストレートとシケインを有する、典型的な近代レイアウトのトラック。ピットやスタンドも大きくて4輪にも十分に対応する。

 

今ラウンドは東半分のテクニカルなナショナルコースで開催される。より高速のレイアウトとなる西半分のインターナショナルコースは、私にとってはロンさんのスクールで走り慣れ、No Limits 選手権では何度も優勝している得意なコース。来慣れているシルバーストーンなのに初レースになるのは皮肉だ。ちなみに、今回のナショナルコースのラップタイムは日本の筑波サーキットと同等かやや速いくらい。ツクバの全長は 2045m だから、この、よりテクニカルな東側のコースでもツクバより高速のトラック。

 

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つまづきながらも好調

第3戦シルバーストーンラウンドは 9月4-6日の開催。日程は、金曜に Free Practice と予選、土曜日に Warm Up と Race1、日曜日に Warm Up と Race2というもの。各日ともメイン出走の前にワンセッションある理想の形。今は走ることだけに集中できるので精神的、時間的な余裕もある。大きな荷物も無いので、ラウンド中はバンの後部一面にマットを敷いて部屋にしている。そこでストレッチをしたり、セッティングを考えたり、イメージトレーニングをしたり、食事や仮眠だって取れる。さながらショボいモーターホームだ。

 

今、私は好調。前戦のスネッタートンは、始まる前の状況を考えれば信じ難いほど良いラウンドになった。散々だった数週間前の NLR ラウンドなど何か月も前のことに思える。今ラウンドまでの間に練習の機会はないが、既に7月11日にZX10RでGPコースを、7月17日のオフィシャルテストでは Panigaleで本番コースを走っている。サーキット自体には来慣れているし、テストの結果も上々で手ごたえを感じている。何より、復帰以来の目標、Panigale 959で ZX10Rの持ちタイムを上回ることを成し遂げた今、モチベーションは高い。

 

迎えた金曜日 13:05からのフリープラクティス。結果は 35台中の17位。タイムはオフィシャルテストを上回る 59.508でまずますの出だし。17:35からの予選では更に 59.060まで詰めて14位。しかもベストラップをペナルティで削られたので、58秒台に入っていたと思う。私はスタートが苦手だが、それはこのレベルでは致命傷。なのでこの日もいつも通りにコースインの際にスタート練習をしたのだが、ここではそれが禁止されていてペナルティーを受けてしまったのだ。

 

このコースの合流レーンは、ピットレーン出口から程ない場所で右にカーブしていて、カーブを曲がった後にしばらく距離が有って合流する。それゆえにピットレーン出口でのスタート練習が禁止されていたのだ。通常のサーキットでは、レース日はピットレーン出口でのスタート練習はいつでもOKであり、私は今回もここぞとばかりに練習をしてペナルティーを科されたという訳だ。この、シルバーストーン・ナショナルならではの規則によって、今回の予選では私を含めて6名にペナルティーが科された。

 

翌5日(土)9:00 からのウォームアップ。出走15分前、身支度を整えて車からテントに入る。んっ?タイヤが暖かくない。Jasonに告げると、おかしい、と言って慌てて予備のウォーマーを掛ける。完全に温めるのに30分欲しいが、程なく周りのライダーが出ていく。セッションはたったの10分しかない。15分程でウォーマーを外してゲートに向かう。数周気をつければいいのだが、たった10分の走行では勢いよく出た時とは内容が違ってしまう。結果は30台中の17位、タイムは昨日の予選より1秒遅い1:00.400…。

 

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Qualifying with Josh Day

 

壮絶バトル

15:45からの Race1は15周で争われる。グリットは 5列目中央14番手。左前には Sam MIDDLEMAS、右後ろには Richard SPENCER が居る。1, 2列目のトップライダー達がそう遠く無い距離に見える。Good Start なら上位に飛び込める位置。レッドシグナルが消えて Here we go!!  後ろの1列丸々に先行を許す。ヤバい、まただ。全力で追いかけて、5周ほどを要して Richard に追いついた。彼とはスネッタートンでもタフなバトルをした。20代、30代のライダーのアドレナリンは大量。今回も壮絶なバトルになった。

 

ホームストレートからの1コーナーの進入で私が挿し、バックストレートで抜き返される、というバトルを何周も繰り返した。10回以上ポジションを入れ替えたと思う。彼のバイクは新型でストレートが速い。バックストレートの中盤あたりで並ばれてブレーキングポイントの前までに完全に私が後ろにつく格好になる。一方の短いホームストレートは、超高速、5速全開の最終コーナーからの流れ。私は最終コーナーが速く、ブレーキングも得意なので1コーナーで必ず挿せた。それぞれに絶対的な優位が有ったので同じことが延々と続いたのだ。

 

最終ラップ、再び私が1コーナーの進入で挿して前に出た。これでまたバックストレートで抜き返されたらゴールラインでは彼が前になる。ストレート前のコーナー出口で限界を探る。それゆえか、彼がミスったのか、それまでよりずっと遅いタイミングで左から並びかけてきた。ここで譲ったら勝てない。ブレーキを遅らせて被せながら左コーナーへ入る。サイド・バイ・サイド。直ぐに切り返して右コーナー。ポジション的に私が前に出る。その後は更に右に回り込みながら得意の高速最終右コーナーへ続く。そのまま 0.329 秒差で逃げ切った。出走31台、完走27台中の13位。3ポイント。ベストラップは58.940。

 

クールダウンラップで Richard と握手を交わす。バイクプールでも興奮冷めやらずに健闘を称え合った。驚いたことに、私と Richard のすぐ後ろ、2.5秒差内に更に3台がゴールしていた。彼らは我々のバトルを間近でずっと見ていた。#50 Matt STEVENS がソファーで足を組んでポップコーンを食べる仕草をしながら、「いいエンターテイメント鑑賞だった」と言ってきた。#90 Craig KENNELLY は、一瞬目をつぶって顔をしかめる素振りをしながら「ヒューッ! 何度も 1コーナーで転んだと思ったぞ」と言ってきた。それぞれもバトルをしていたはずの彼らからの、驚きを交えた称賛がうれしかった。 

 

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Race1 Bad Start

 

John McGUINNESS

翌6日(日)10:00から10分間のウォームアップセッション。昨日からの自信をそのままにコースイン。Pavとの相談でリアを少しソフトに振ってコーナーが更にバッチリ決まった。行けるぞ。その感覚の通りに、結果は 32台中の10位。予選/決勝ではないものの、レースウィークの完全なコンディションにおける初めてのトップ10入り!タイムも自己ベストの 58.892 でトップから 1.894秒差。私は完全にこれまでより一段上の位置に居た。Jasonと Pavが、「#4 John McGUINNESSの 58.908 より上だぞ!」と大喜びしていた。

 

ご存知の方も多いと思うが、John McGUINNESS選手は、マン島TTで故 Joey DUNLOP選手の歴代最多の26勝に次ぐ23勝をマークしている英雄。48才の彼は現在も現役で歴代最多勝利を狙っている。ただ今年はパンデミックの影響でマン島TTが早々にキャンセルになり、急きょ BSB Ducati TriOption Cup にフル参戦しているのだ。ストリートレースとトラックレースは違うが、私より少し若いだけの彼の速さはトラックでも健在。ここでも常に上位を走っている。私だってもともと峠上がり。マン島に出て彼と戦うか? いやいや、危ないわ… ↓↓↓ (マン島TT の情報は RMA HP にもあります)

 

 

悔しくも上々の Race2

14:35からの Race2、グリットは 6列目16番手。チームの皆が別れ際に「Hiro!バックギアじゃなくて1速だぞ!」と言い残していく。そう、私はスタートが苦手でもはやトラウマレベルになっている。今の状況なら本当はイケイケのはずだが、アドレナリン全開であるはずのグリッドでも気後れしていた。レッドシグナルが消えてスタート。ヴォォー、、昨日よりも悲惨で後ろ 2列に抜かれる。でも一度走り出せばアドレナリンが噴出する(情けない…)。いつものようにどんどんポジションを挽回してレース中頃に中位グループのトップに立った。しかし、私が飛び込みたかった上位集団は既に 5秒以上先に居た。

 

こうなるといつものパターン通り、この 7, 8台の集団のトップが目標となる。ずっと集団の先頭をキープして迎えた最終ラップ、バックストレート前の右ヘアピン。後ろにいる Matt STEVENS と Richard SPENCER のバイクは共に新型V2でストレートが速い。立ち上がりはコーナーの進入で決まる。限界のブレーキングから素早く右へチップインしようとすると、後ろの争いで勢い余ったのか、True Hero のマシンが私の更に内側、縁石の上を弾丸のごとく、ズバッと突き抜けて行った。何だっ!? 思わずバイクを起こす。直ぐにターンに戻って、少しでも早くアクセルを開けようと立ち上がる。

 

しかし一瞬バイクを起こして倒し込みが遅れた分旋回に角度がついた。リアが流れてグワングワン振られた。構わずアクセルを開けて立ち上がったが、一瞬のアクセルの遅れはストレート後半に影響する。案の定ストレートエンドで Matt の オレンジ V2マシンに並ばれ、ブレーキングでインを取られてかわされた ↓↓↓。インをブロックすべきだった…。かくなる上は得意の最終コーナーでスピードを乗せてゴールラインまでにかわすしかない。最終前のコーナーも詰まるほど余裕が有ったので大きくアウトにラインを取る。だが、ここのゴールラインはホームストレートの早い位置。僅か 0.119秒届かず、Matt が拳を突き上げた。

 

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Race2 Final Lap Straight End

 

結果は、出走34台、完走30台中の14位、2ポイント。ベストラップは58.897。上位を狙っていたし、狙える状況だった。上位で走ればタイムももっと詰まったはず。何より最後の最後で挿された状況には大きな悔しさを感じていたが、ペース自体は悪くはなく、レースタイムは昨日の Race1から 8秒近く短かく、優勝者比のレース平均スピードも 95.67%と、これまでの最高だった。ちなみに、このコースにおける私の平均スピードは約100mi/h、時速にして160km/h ほど。前戦のスネッタートンに続き、上々のエキサイティングなランドが終わった。

 

             ーグリッドー   ー決勝ー   ーRace Speed (優勝者比)ー

Race1        14th           13位               95.17%
Race2        16th           14位               95.67% 

 

 

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