ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.15 Round1 オールトンパーク 

 

なんだか勝手が…

2016シーズンの第1戦は 3月25-26日、昨年不出場のオールトンパーク(サーキット詳細は Vol.7 参照)で開催される。英国特有の古典的レイアウトを持つ、カドウェルと並んでイギリスの一般ライダー達に愛されているサーキット。日本人には馴染みの薄いタイプのトラックだが、元 BSB Superbike チャンピオンの清成選手は得意としていた。

 

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私にとっては、これまで一度も、まともに走ったことすら無い、カレンダーの中で唯一自信を持てていないトラック。難しいコースであることは分かっている。ラウンドを前に、3月初めに練習に行った。が、この季節のイギリスの天気はまだ悪い。昨年の雪模様とまではいかなかったが、またもや雨でまともに走れなかった。どうも相性が悪い。

 

その日は日程的に同じ選手権に参戦するレーサー達が多く来ていた。ピットを歩いているとあちこちから「Hiro、今年は何のクラスだ?俺たちにも関係あるんだけど?」みたいな質問を受けた。上のクラスのライダー達も私を警戒しているというのか?「去年と同じだよ」と答えると決まって、「そうか、ならチャンプ楽勝だな」と返された。

 

結局、レース前日の公式練習が唯一の練習の機会になった。時間が無い。とりあえず正しいラインを教えてもらおうと、ここをホームとする昨年のライバルの一人、 Cookie (Stewart) に引っ張ってもらった。なんとか付いて行っただけなのに、走行後、彼は周りに「Hiroはいきなり速かったよ。明日はやはり Hiro が優勝するよ」と言いふれていた。

 

また、ピットガレージが同じだった東欧から遠征に来たと言うライダーとそのメカニックから「Hiro!  Hiro!  Hiro!」と事あるごとにチアを受けた。話してもすごく私を持ち上げてくる。そもそも「何で私の名前を知ってるのか」と聞くと、「オフィシャルに誰が本命かを聞いたら教えてくれた。あちこちでも Hiro がチャンプ確実って聞いたよ」と言う。

 

そうか、そういうことになるんだよな。無名だった去年と違って、今年は皆、昨シーズン実質的に最速だったのにクラスに残留した私が、勝って当たり前と思っているんだ。

 

らしからぬ判断

一方で、自分的にはまだまだコースのあちこちのポイントに躊躇が有り、レースを翌日に控えても勝てる自信を得るまでに至っていなかった。とにかく、このテクニカルなコースで、2年間を通して一度も晴天の下で走り込んだことが無いんだ。自分としては自信を持てていない理由は分かっている。でもレースにそうした言い訳は加味されない。

 

これでは去年と同じだ。去年は、デビュー戦の劇的な勝利の後で、次もそうしなければならないというプレッシャーを感じ、勝つための準備が間に合わないとして欠場した。そして、その自らによるポイント放棄は、その後のレース展開に大きな影響を及ぼした。背水の陣の今年、昨年と同じ轍は踏めない。どうするか。

 

長いシーズンには手堅くいくべきラウンドも有る。昨年は常にイケイケで失敗したではないか。まわりの予想通りに勝たなくてはならないことは無い。期待を受けているのにみっともない走りは出来ないというプライドを捨てて、出来る限り上位でフィニッシュすることを考えれば良いではないか。そういう気持ちになっていた。

 

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相性の改善

果たしてレース結果もその通りとなり、Race1 は 3位、Race2 は 2位、Race3 は2 位と、そこまでの 3レース全てで表彰台に登り続けた。微妙な路面状況だったにもかかわらず危ない場面も無かった。まだまだシーズンは始まったばかり。無理をする必要ない。という作戦の上では上々の出来であった。

 

ただ、感覚的には多くのライダーに後塵を拝した気持ちがした。そう感じるのはたぶん、相手と戦って敗れた結果の表彰台では無く、自分として精いっぱい走った結果の表彰台だったからだと思う。至近距離で争ったって相手は関係なく、自分として無理があると思えば後ろに留まったのだから、その数だけ負けた感覚になるのは当然だ。

 

これではいくら表彰台に乗り続けたってうれしいわけがない。良いか悪いかは別にして、私には手堅くポイントを取って満足する感覚は無いと思う。最終の Race4 に向けては、それまでの抑圧に似た感覚が解き放たれ出し、優勝を狙おうという気持ちが沸いていた。スタートグリッドも Race3 のベストラップからポールポジション。よし、そろそろ相性改善といこう。

 

しかし、スタートを前に車の中で気持ちを高めていると、その気持ちを挫くように激しい雨が降り出した。止んではまた降るの繰り返し。レースの進行がどんどん遅れていく。この季節の日没はまだ早い。結局、私のクラスを含めたいくつかのスプリントクラスの Race4 は日没キャンセルになってしまった。何でこうなるかな。。オールトンとの相性は悪いままだった。

 

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新たなライバル達

Race1 はあの東欧から来たライダーが優勝した。聞けば彼は東欧のどこかの選手権のチャンピオンだったらしい。彼のレース中のベストラップは 3位の私より遅かったし、Race2 ではトップ走行中にクラッシュを喫した。Race3 はその影響で欠場となったのだから決してパーフェクトな成績ではなかった。それでも周囲に、最速ライダーの印象を与えた。

 

私も強いインパクトを受けた。それはきっと彼が始めて見るこの難しいコースに臆することなくチャレンジし、英国選手権のライダー達を打ち負かそうと、東欧チャンプのプライドをむき出しに戦ったからだろう。そうか、ガレージでの私へのチアは挑戦状だったのだな。彼はきっと、Hiro も聞いたほどのライダーじゃないな、と思ったことだろうな。

 

その他にも見慣れない速いライダーが何人か居た。特に Race3 で優勝した、大げさなハングオンで気合満点の走りをしていた#29 Mark Bridger(マーク ブリッジャー)というライダーが記憶に残った。東欧の彼と言い、Mark といい、やはり元気な走りをするライダーは、その成績以上に印象に残るものだ。昨年の私もきっとそうだったのだろう。

 

また名前は分からないが、昨シーズンの他のクラブレースのチャンピオンと、上位ライダーも何人か居るらしかった。人伝てに聞いた話では、英国選手権を荒らしている日本人を破るために移ってきたのだとか。きっと、移って来た後に私のことを知って後付けした話だとは思うが、そんなモチベーションを作るのやめてくれよ。。

 

               ーグリッドー   ー決勝ー
Race1          7th              3位
Race2         2nd              2位
Race3         2nd                 2位
Race4       ポール               ー  (日没レースキャンセル)

 

リベンジを誓って臨んだシーズン。しかし初戦は “らしからぬもの” になった。 去年最速だったのに残留した私に対して周りが冷ややかである気がした。そうではないかもしれないが、ラウンドを通して曇っていた空と、自分にあった後ろめたさがそう思わせた。完全に呑まれている。レースはメンタルだ。何とか気持ちを立て直さねばならない。 

 

 

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