ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.8 第3戦 ドニントンパーク

Donington Park Circuit

ドニントンパークサーキットは、ロンドンから北方向に車で2時間、ミッドランド空港の近くにある。コース全長 4.020 km。シルバーストーンと双璧を成すイギリスのアイコン的サーキット。メジャーイベントも多く開催される。丘を駆け巡るイギリス的なトラックだが、オールトンやカドウェルのような古典的とは少し違って比較的見通しが良い。シルバーストーンやスネッタートンのような平地サーキットとの間のようなレイアウト。2輪向きではあるが、National コースなら4輪レースも成り立つ(一時F1開催も企図された)。

 

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ZX10Rを輝かせた男

2015 NLR Championship R3 Donington Park は5月16-17日開催。いよいよドニントンラウンド。ロンハスラムレーススクールで走り込んでいるこのラウンドがあるがゆえにNLR 選手権を選んだ。前戦の欠場を後悔しないためにも良い結果を得るしかない。

ロンさんのスクールでのノーマル Fireblade における私とレオンのタイム差はおよそ5秒だった。レオンの Super Bikeでの持ちタイムが1分29秒台だから、スクールでの彼の本気度や今のマシン差を考えると8-9秒ほど加えた1分37-8秒台あたりが目標か。前年度のNo Limits New Commer 1000クラスのドニントンベストは38秒台。まさにである。

 

レースウィーク前に一度だけ練習に行く。ペースを上げ出したころ、コーナーの侵入で一人のライダーがスパンッと前に入って来た。驚いてバイクを起こす。速い、何者?  そうか。この日は何人かの BSB ライダーが走っていた。現れ方のインパクトが違う。うまく言い表せないが、フルバンク状態のマシンが目の前にバッと滑り込んでくる感じ。

Track day は相手を起こすような抜き方はいけないはずだろ、なんて言っては野暮である。彼らが Track day で練習する時はスペシャルインストラクターという立場で居ることが多く、実際、頼めばコーチングしてくれることもある。料金は直接交渉だが、一般のインストラクター(£25/セッション)の 3, 4倍はするらしい。

 

んっ?あの金色のメット、TVで見たことが有る。去年 BSB Super Stock 1000 でチャンピオンになり、今年 BSB 最高峰 Super Bike に参戦している Filip Backlund 選手、そう私のバイクをチャンピオンマシンにした男だ。走行後に話しかけに行く。彼も直ぐに私のバイクが去年の自分のマシンだと気づいたようで色々話し込んだ。そして「何か困ったらいつでも連絡して」と名刺をくれた。会話の節々に旬のライダーの自信がみなぎっていたが、優しい顔をしたナイスガイだった。ちなみに今日は34秒台くらいで走っていたとのこと。あれで34秒台だと、目標タイムもなかなかのレベルだ。

 

無念の空回り 

金曜の公式練習。Dani の欠場を知る。敵は Thomas だけか。ここは4連勝したい。迎えた土曜日の朝の予選でポールポジション獲得。よしっ、いける。Race1、グリッドでスタートを待つ。レッドシグナル点灯、アクセルを吹かす、エッ?エンジンが廻らない。手を挙げるが、レッドシグナルが消えて一斉にスタート。後ろからの追突を逃れた私はなんとか最後にスタートを切った。だがやはり11000回転で頭打ち。メカニカルトラブルだ!大事を取ってそのままピットへ戻り、リタイヤとなった。

 

 f:id:RMARacing:20200412223626j:plain早速修理をしようと思うがピットでは問題なくエンジンが吹ける。ガソリンチューブを挟んでたとかでもない。燃料ポンプか?こういう訳の分からない状況は電気系だ。MSSに電話をして色々聞くが電話越しの話だけでは明確な原因と解決方法が分からない。Donington から Colchester までは片道3時間。今からではMSSの閉店時間に間に合わない。万事休す。とにかく自分で出来ることとして、センサーの掃除をしたり、ヒューズを換えたり、見える全てのコネクションキャップをハメ直したりした。

 

日曜日の朝の予選。バイクは問題ない。再びポールポジション獲得。ライバル達に「Mr. Pole」と言われる。今日こそ良い日にしたい。この日最初のレース(Race2)は、第一戦 Snettertonの際と同じく、昨日の Race1 で1周もしておらずにタイムの無い私のグリッドは最後尾。バンバン抜く。Snettertonの時と同じく3位でフィニッシュした。

私は追いかける方が性に合っているようだ。映画「汚れた英雄」で、転倒最後尾から怒涛の追い上げで優勝したシーンを思い出した。さすがに同じようなペースで走るライバルがいる上では優勝は出来なかったが、満足だ。とにかくバイクが走ってくれたことに安堵したが、一方で、どこかを明確に直してのことでは無かったので一抹の不安は残った。

 

日曜日2レース目のRace3、朝の予選結果からポールスタート。スタートで少し出遅れて3,4番手で1コーナーに入る。Thomas が逃げるのが見える。彼との一騎打ちを予想し、彼の背後に追いついた後一息つく。残り周回数も少なくなったころヘアピンでアタック。一度抜くもオーバーランして抜き返される。もう一度。彼がペースを上げて少し離れる。よし、落ち着いてこの周で背後について、最終ラップでアタックだ。ホームストレートに入る。

 

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エッ?チェッカーフラッグ?しまったーっ。残り周数を見誤った。はじめてガチンコで負けてしまった。最終ラップだとは思っていなかったとは言え、離された。後から彼自身に聞いたが、私が少し離されたその周は、前ラウンドの最終戦の経験から、私が必ず最終ラップでアタックしてくると予想して限界の走りをした、とのことだった。やはり Thomas は速いライダーだ。

 

そしてこの日の3レース目、今ラウンド最終レースの Race4。絶対勝たなければならない。このラウンドの成功を前提に第2戦の Oulton Park を欠場したのだし、昨日も今日も予選ではポールを取っているのだ。速さは証明してるのに未勝利は有りえないではないか。グリッドは 2番手。Thomasが前レースの最終ラップのタイムからポール。2人ともタイムは1分37秒台に入っていた。

 

 

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レッドシグナル点灯、気合が入る、ライトが消える、スタート!アクセルを開ける、ボボボッーッ。エッ、またなのか! アクセルが吹け上がらない。最終レースとして壊れてもいい。そのまま走り続けた。エンジンは11,000で頭打ちし、ストレートでバンバン抜かれる。13位フィニッシュ。


全くもって気合いが空回りするラウンドとなってしまった。同じピットに居合わせ、昨日私がずっと原因不明のトラブルを追いかけてバイクを整備していたのを見ていたライダーが「Hiro は速かったし、出来ることはすべてやったよ」と大いに落ち込む私を慰めてくれた。ありがとう。 その優しさに余計に悔しくなって泣けてきた。

 

                ーグリッドー   ー決勝ー
Race1           ポール         リタイヤ    (マシントラブル)
Race2           最後尾             3位
Race3           ポール             2位
Race4             2nd              13位         (マシントラブル)

 

何てことだ… オールトンを捨ててこのラウンドに掛けたのに、どんどん Thomas にチャンピオンシップポイントを離されてしまう。落ち着け。まだ間に合う。とにかく直ぐにバイクをMSSに持ち込もう。

 

 

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