ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.19 Round5 シルバーストーン

 

謎の R1ライダー

7月16-17日、次の舞台はシルバーストーン・インターナショナルサーキット(サーキットの詳細は Vol.10 参照)。F1 や Moto GP の UK ラウンドも開催されるサーキットの敷地は広く、クラブレースにおいては(時に BSB でさえ)、大会管理の観点から、コースを 2分したナショナルコースかインターナショナルコースで行われる。

 

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前戦のアングルシーラウンドでは、週末を通して目まぐるしく変わる天候の中で冷静に対応して「らしからぬ完勝」を果たした。そしてチャンピオンシップでも、ポイントリーダーの Michael に 4.5ポイント差に迫った。今回のサーキットは去年、絶好調の中で 3戦全勝、Race4 が大雨キャンセルにならなければ、全レースでポール to ウィン + Fastest Lap という完全勝利を果たせたであろう得意のサーキット。ここで一気に逆転と行きたい。

 

迎えた土曜日、朝の予選は 4位。満足できない。ポールを獲得したのはレギュラーメンバーでは無い Yamaha R1 に乗るライダーだった。この長くないコースで 2位に 2秒もの差をつけている。ただしタイム的には、私の昨年のベストよりも 1秒以上遅い。タイトなスケジュールのクラブレースにおける予選はたったの 10分しかない。実質のタイムアタックはほんの数周で、時にこういうことも起こる。気にせずに行くしかない。

 

迎えた Race1 決勝は、その R1ライダーと一騎打ちになった。レースを通して彼の背後にピタリとつけて抜く機会をうかがう。そして最終ラップの大詰めのシケインでインに飛び込んだ。抜いた、と思ったが R1 が被せてくる。ポジション的にはイン側の私が有利。そのままねじ込んでやろうかとも思ったが、彼はチェンピオンシップに関係ないライダー。接触転倒という最悪の事態を避けるべく、グッとこらえて引き、僅か 0.127秒差で 2位となった。3位は私から 1.154秒差の Michael。

 

レース後、R1 の彼におめでとうを言おうと近付くと、彼は Michael と話をしていた。そして「あの Japanese が並びかけて来たから、ピシャッと閉めてやったぜ」と手で叩くしぐさをしながら二人で笑っていた。彼と Micheael も初対面のはず。去年のカドウェルでもそうだった。イギリスの選手権を掻き回している有色人の私は、彼らには返り討ちにすべき相手として話すことになるのだろう。そうだよ、私は君たちが乗っている優秀なバイクを作った国から来た日本人だよ。話しかけるのをやめた。

 

一進一退 

日曜の朝の予選も 3位だった。レースにおいてはフロントロウであれば十分なのだが、昨日の予選といい、得意なトラックとしては、ポール、ポールと行きたいところ。なんとなく乗り切れない。そしてあの R1 ライダーがまたもやポール。今回の彼とのタイム差は 0.668秒。依然として私のベストより 1秒近く遅いが、ともあれ彼は速いライダーだ。第1戦のオールトンの時のように、どこかのチャンピオンのスポット参戦だろうか。

 

その日の最初のレース、Race2 は、昨日の Race1 のベストタイムによってセカンドポジションからのスタート。レッドシグナルが消えて Go! 彼が逃げる。私は相変わらずスタートが悪く、Michael を抜いて2番手に上がった時には 3秒ほどの差が出来ていた。だがまだレースは 2/3以上ある。さすがに同じ相手に 2連敗は、クラス最速を自負する身、ましてや得意のトラックでは許されない。

 

徐々に詰める、2秒差。高速の Abbey コーナー後のタイトな右コーナー。前でバッと白い砂ぼこりが舞い上がる。彼がフロントからクラッシュを喫した。私が迫っているのを察して無理をしたか。彼はリタイヤとなり、私はそのまま Michael を 1.541秒差で振り切って優勝した。Michael から約 6.4秒遅れて Phil が3位、さらに 4.9秒遅れて Mark が 4位と続いた。下の写真は #3 私と、#991 Michael。彼はずっと私の背後に喰らいついていた。

 

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続く本日 2レース目、 Race3 は朝の予選結果から 3番手スタート。ポールの R1 の彼が居ない。どうやら先のクラッシュからマシンを直せなかった模様。レッドシグナルが消えてスタート。このレースは最近調子の上がっていなかった 2番手からスタートした Mark との一騎打ちになった。ずっとトップで走り続け、最終ラップを迎えた際の Max の出したピットボードは +1秒のサイン。過去数周ずっと同じ。手堅く走れば良い。

 

しかし油断し過ぎた。長いハンガーストレートからのブレーキング。Mark がアウトからあわやオーバーランという突っ込みをしてきた。まさに第3戦、ドニントン Race2 と同じ展開。またインからすくってしまったらマズい、という気持ちが彼の先行を許した。何とかこらえた彼が前へ出る。残るはシケインと最終コーナー。シケインで抜き返そうとしたが、既に腕上がりが始まっていた私は躊躇してラインを外した。0.580秒差で敗れた。

 

大逆転でゴールラインを通過した彼の喜び方はすごかった。後ろから見ていてもバイクから落ちるのではないかと思うほど全身を躍らせていた。彼の 10人以上いるチームメンバーもピットウォールで大騒ぎだった。その様子を間近で見ていた Max は「すごい騒ぎだった。あそこまで喜ばれるとむしろこっちが誇らしくなるよ」と言っていた。そういえば Max はいつもピットで 1人だ。私と同じように肩見の狭い思いをしているのだろうか。

 

優勝を目前で逃して少し納得がいかず、Max に、最終ラップに入る時 +1って出してたよね?と確認した。確かに1秒あったらしい。最終ラップの私のタイムが前の周から 1秒近く落ちていたのに対して、Mark は自己ベストを更新してこのレースの Fastest Lap を刻んでいた。やられた。Mark はどちらかというと気持ちで走るタイプのライダー。ガッツのある走りをする。対照的な手堅い Michael は私から 4秒遅れて 3位だった。

 

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上の写真は、#3 私と #29 Mark。今ラウンドの全 4レースを通じて Mark に先行を許したのは、Race3 の最終ラップに抜かれたコーナー以降のみ。背景の感じから、抜かれた直後の Stowe(ストウ) コーナーの立ち上がりかと思う。

 

やっと、やっとだ

迎えた最終レース、Race4。これまでのラウンドでもそうであったように、その日のバタバタが全て落ち着き、後のレースが無くてガチンコになる最終レースの私は速い。そこまでの展開にはフラストレーションも有ったのでスカッと行きたい。R1 の彼にリベンジも果たしたかったが、グリッド上に彼の姿は無かった。怪我はしていなかったようなので、マシンが直り切らなかったのか。出場しても最後尾スタートになるので意欲がわかなかったのかもしれない。

 

レースの方は自信の通り、私は序盤から独走した。毎ラップ、後続との差を 1秒ずつ広げ、最終的に 2位の Mark に 10秒、3位の Michael には 12秒もの大差をつけて優勝した。それまでの 3レースのあれこれを無かったことにするかのような圧勝だった。ベストラップも 2人に 1秒の差をつけた。Max は「完璧な展開だね。これで最速はやっぱり Hiro さんって印象付けられたでしょ。すっきりした。」と喜んでくれた。やはり彼にも私と同じモヤモヤがあったのだろう。

 

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結局このラウンドは優勝 2回、2位 2回の成績だった。2回の 2位は、ともに 1秒以内の僅差の敗戦。昨年同様に全勝も夢では無かったと思うと少し悔しいが、ともあれ最終レースの独走は、Maxの言うように、だから最速は私なのだよ、と見せつけられた気がして気分が良かった。Michael はいつものごとく手堅く 3つのレースで表彰台に昇ったが、全てのレースで私の後塵を拝した。リーダーの座から陥落し、逆に私が 17.5ポイントの差をつけてポイントリーダーに立った。やっと、本当にやっとだ。

 

それにしても Michael は速さで劣ってもしぶとい。私はどうもポイント計算をするのが好きではない。常に優勝を狙い、最速を望み、チャンピオンは速い者がなると思っている。しかし彼はレース毎に細かく計算しているようだ。Race2 終了後のバイクプール。今思えば、おそらくこのレースでポイントリーダーが逆転したのだろう。彼は首を横に振りながらうなだれ、隣にバイクを付けた仲間の Phil に肩を抱かれて励まされていた。勝つことに執着する私、チャンピオンシップに執着する彼。印象に残るシーン。

 

               ーグリッドー   ー決勝ー
Race1          4th                 2位
Race2          2nd               優勝
Race3          3rd                 2位
Race4          2nd            優勝

 

 

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