ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.28 NLR ドニントンパーク ラウンド

 

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NLR Donington Park Round に参戦

BSB の次の舞台はオランダ Assen 。BSB は全英選手権だが、毎年オランダのアッセンTTサーキットでのラウンドが組まれている。なんとも心躍る。ただそこまで 5週間空く。一方でアッセンラウンドの後、Ducati Cup 今シーズン最終戦となる BSB ドニントンパークラウンドまでは 2週間しかない。練習出来ても 1回。その日が雨にでもなれば、まともな練習無しでレースウィークを迎えることになってしまう。

 

全く知らないアッセンはさておき、ドニントンは私が一番よく知るコース。そこが今シーズンの最終戦。来年のシートが有るかも分からない自分にとっては、BSB 最終戦になるかもしれない。Dani を負かすチャンスも、もし有るとしたらそこしかないだろう。チームに頼んで、アッセンまでの期間に、Panigale 959 でドニントンで開かれるクラブレースに出場させてもらうことにした。レース感を得るには練習よりもレースが良い。

 

出場したクラブレースは、勝手知ったる NLR 選手権の第8戦、Donington Park ラウンド。30 AUG -1 SEP 2019 開催 。今回は NLR 代表の Mark に頼んで、ずっと使えずにいた 3年前の 2016 シーズンの年間 Award を使って参戦させてもらった。本当はレベルの高い No Limits Cup 1000 クラス(2016年のライバル Michael Austin が 2017年にチャンプになったクラス)に出たかったが、空きの関係で、Panigale 959 で参戦可能なもう一つのクラス、Ducati Challenge クラスになった。

 

Mark は、Hiro なら優勝できるよと言う。まだ本調子ではないし、何せ Panigale。彼が想定している速さで走れるか分からないが、優勝を狙えるのは悪くない。ただ、BSB の練習という目的においては少し意味が違う。そうするとタイムが重要になってくる。Donington Park における ZX10R での私の持ちタイムは 1分36秒台。つまりその週末に、Panigale 959 で 1分40秒台で走れば、とりあえず前戦  Cadwell Park のレース前と同じ感じまで持ってきたことになる。その上で Assen の後でもう一回練習が持てる。

 

タイム差というもの 

そのような目標設定をしていた時、BSB Ducati Cup からもう一人参戦することを知った。私と同じような考えなのだろう。彼の名は Sam Middlemas。先のコラムで説明したクラス内の区分けでいうと、中位グループの上位を走るライダー。時にトップグループにも絡む。今の私が勝負するには少し速すぎる相手。彼が参加する以上、優勝という目標は失うことになってしまうが、本番の模擬レースという意味ではむしろ良い。

 

でもいったい彼はどれくらいで走るのだろう。これまでのパターンから考えると、Dani は 1分 36, 7秒あたりで走るだろう。Ducati クラスのそれぞれのグループ間には ラップ 2秒ほどの差が有るので、ということは Sam のベストラップは 34, 5秒あたりか。考えてもしょうがないが、きっとクラスのトップは 1分 32, 3秒で走るのだろう。ほぼスタンダードの Panigale 959 でこのタイムはとんでもないもの。

 

例えばドニントンでのスーパーバイクのベストラップは 1分 28, 9秒辺り。ただそれは名だたるトップライダーが限界で走ったレースを通してのもの。予選通過タイムは 32秒台で、日頃の練習程度ともなれば 33, 4秒台で走っている。最高峰クラスでそうだから、同じくトップライダーが集まる スーパーストック 1000 や スーパースポーツ 600 のそれはそこから数秒落ち。つまり、彼らの速さはメインのクラスでも通用してしまうのだ。

 

ちなみに、Ducati クラス内のグループ間にある 1周 2秒ほどの差は、例えばコーナーが 10コ有るコースなら 1コーナーあたりはたったの 0.2秒。実際はコーナー脱出の差によって生じるストレートでのタイム差が大きいから、コーナー自体の差はそれ以下。そのたったコンマ 1秒ほどの僅かな差に、そう簡単に超えられないレベルの差が有り、それが一周になると、毎戦において横たわる大きな隔たりになる。

 

最近こそ出走台数が少なくて超精鋭達だけになった世界最高峰の Moto GP でも、参加台数の多かった一昔前の WGP のころは毎戦のようにブルーフラッグが降られていた。つまりラップ遅れが出るということ。もし 1周 2分(120秒)のコースを 25周で争うレースならば、トップとそのライダーのラップタイム差が 5秒あると周回遅れになる。Ducati Cup はレース周回数が少ないために、私はラップ遅れにならずに済んでいる。 

 

ラブレースに先駆けて、今回も ZX10R で練習に行った。練習後、一般のライダーに「1コーナーの侵入がすごかったです!」と興奮気味に言われた。わざわざ言いに来るのだから相当に感動したのだろう。たぶん降り出したタイヤが流れているか、ドリフトしているように見えたのだと思う。当然 World SBK で見るようなものではない。その上にはマークマルケスのような超人もいる。バイクのコーナリング。とても深い。。

 

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久し振りのトロフィー

8月30日(金)の公式練習。BSBと違って 1日を通して 7セッションも走れる。これは有難い。しかもクラブレースは週末を通して 4レースもできる。そう言えば、 Ducati Cup 参戦を 1年で取り辞めた知り合いは、サポートレースゆえの取り扱われ方にも増して、走行時間についても言ってたっけ。確かに走行量におけるコスパは 3倍近く違うかもしれない。それでも、何万人もの観衆や、ハイレベルな環境に魅力を感じる者だけが参戦を続ける。

 

公式練習日のタイムは 1分 42秒台だった。週末を終えた時点での目標タイムとしている 40秒台に向けてはまあまあか。そしてこの日はそれ以上の収穫があった。ちょうど、元 Moto GP Yamaha Tech3 ライダーで、現在は BSB Superbike に参戦している James Ellison 選手とピットガレージが一緒になった。彼にお願いして、持ってきていたもう 1台の Panigale を使って一緒に走ってもらい、私のライディングとセッティングについてのアドバイスをもらった。

 

私のレベルでもサーキットにいる職業インストラクターでは遅すぎる。教えを請えるのはこうしたスペシャルライダーに遭遇した時だけ。彼らの来場はスケジュール表には無いから、こんな機会は逃せない。そして期待の通り、世界レベルのライダーからのライディング指導は有効だった。私の走りは 1000cc のそれで、とにかくアクセルを開けるのが遅いと指摘された。また、スピードを保ちながら向きを変える方法を考えるように言われた。

 

そして、バイクへのインプレッションとアドバイスをもらえた。まだまだ未熟な私はスペシャルなセットなど求めてはいないが、あとは自分のライディング次第という、とりあえずの状態は欲しい。チームに本職のメカニックが居らず、一抹の不安が有ったうえでは、現在のセッティングはとりあえず悪くはないと分かったのは良かった。アッセンについてのアドバイスも受け、アッセンで行きつけのレストランに連れて行ってもらう約束をした。

 

8月31日(土)は、朝の 10分間の予選と昼過ぎの Race1 の 2回の出走。日曜日は、朝の Warm up に続き、Race2、Race3、Race4 の 4回の出走だ。これまでも説明してきた通り、NLR は土曜の午後に耐久レースを開催しているので、スプリントクラスの日曜は忙しい。今回のレースの内容は割愛するが、結果は、Race1、 Race2、Race3 は Sam に続いて 2位でゴール。Sam が出走を取りやめた Race4 では優勝した。予想通りの結果。Jason も、今回の状況ではこれ以上は望めない結果だ、と喜んでくれた。

 

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もちろん今回の課題はタイムだが、果たして、私の 4レースを通してのベストラップは、Race3 の 1:40.790 だった。そう、目標の 1分 40秒台を達成した。これにはホッとした。最終戦に向けてのモチベーションが全く違ってくる。ちなみに Sam のベストラップは私より概ね 4秒ほど速い。Race3 では 1分 36秒台に入れ、レースタイムでは概ね 30秒ほど離された。さすがに速い。本番では更に詰めてくるだろう。

 

でも 36秒台は私の目標とする自分の 1000cc マルチでの持ちタイムと同じ。つまり、Dani のように Panigale 959 のライディングをマスターして 1000cc マルチと同等のタイムで走れば、今日の Sam には追いつくのだ。たった少しのアベレージスピードの進歩がレース距離ではとても大きな違いになる。それを成し得れば、目標の中位グループに入れることになる。少し厳しいが、最終戦での目標はやはり自分の ZX10R でのタイム。

 

               ーグリッドー   ー決勝ー 
Race1           5th             2位       
Race2          2nd             2位      
Race3          2nd             2位      
Race4          2nd               優勝      

 

ともあれ、久しぶりにいくつものトロフィーをガチャガチャと持ち帰るのは気持ちが良かった。子供達や No Limits Racing の旧知のスタッフも喜んでくれた。Sam が「もう十分」とばかりに出走を取り止めた故の棚ぼたの優勝ではあったが、Race4 の優勝カップはクラブレースに付き合ってくれた Jason に渡すことにした。この週末は天気にも恵まれ、楽しく、有意義な週末だった。次はいよいよアッセン。すこぶる不安だが、とりあえず調子が上向きの状態で行けるのは良い。

 

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