ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.36 BSB 開幕への仕上げ。NLR スネッタートン300 ラウンドに参戦。

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NLR Championship Round1 Snetterton300 on 1/Aug/2020

 

NO LIMITS RACING 選手権 R1 Snetterton

8月1-2日の週末、No Limits Championship 第一戦がスネッタートン300で開催される。クラブ(アマチュア)レースも通常は 3月からシーズンが始まるが、今年は BSB 同様に開始が遅れて NLR選手権もこれがシーズンの開幕戦。もちろん私は BSB Ducati TriOption Cup にフル参戦するのだが、BSB 第2戦はこのスネッタートン300が舞台。練習と本番前にレース感覚を取り戻すことを目的にこのレースに参戦することにした。本当は BSB ラウンド順のサーキットで、練習、BSB 本番と一戦ずつこなして行きたいところなのだが、毎戦の間隔が 2週間しかない今シーズンはどうしても前後してしまう。

 

スネッタートンは私の住むロンドンの北東、道のりにして約160km、平地に広がるフラットなサーキット(詳細は Vol.6)。私は思いきり走れるこの手のトラックは嫌いでは無く、2014年の初走行ではインストラクターを振り切り(Vol.3)、 2015年には鮮烈なクラブレースデビューを飾った(Vol.6)。ただ、得意なはずと思って臨んだ昨年の BSB 第5戦、私の BSB 初レースでは、長いブランク、病み上がり、レベルの高さから一人取り残されたようなレースをして完全に打ちのめされた(Vol.26)。従ってここで良い結果を得られれば、調子を取り戻してきた自信とモチベーションが不動のものになる。

 

今回の参戦クラスは空きの関係から No Limits 選手権の最高峰クラス、Pileli Super Series 1000になった 。アマチュアレース選手権と言っても、No Limits などのメジャー団体は参戦台数も多くてレベルも高い。最高峰クラスともなれば Nationalライセンス(日本で言う国際A級)ライダーばかりで、排気量フリーとしてマシンも1000ccマルチがほとんど。事実、昨年のトップタイムは 1分54秒台で、BSBの Stock 1000 で予選を通過してしまうタイム。1000ccの国際A級ライダー達にクラブマンライセンス(昔の日本の国内A級)の私が 600cc マルチと同等の Panigale 959ツインで挑む格好だ。

 

ただ、Ducati TriOption Cup のスネッタートン300 のコースレコードも 1分54秒台だから、今回のクラスはそのまま本番のレベルと言える。ある程度のレベルのレースでは、最後尾のラップタイムはだいたいそのクラスのコースレコードから10秒落ちほど。1分54秒台から10秒落ちは 2分4秒台で、私の去年の復帰戦のタイム。つまり、私が成長していなければビリだし、目標としてきた自分の1000cc の持ちタイム、2分0秒台で走れば中盤辺りになるはず。去年からの成長計画においてはいい加減に当面の目標は越えなければならない。今回のレースでは何とか 2分を切って中盤でフィニッシュしたい。

 

今ラウンドの日程は、金曜に公式練習(最大7セッション)、土曜に Free Practice と予選、そしてRace1。日曜に Race 2、Race3、Race4 というもの。この、BSBに比べて圧倒的に多い走行量がクラブレースの魅力であり、それなりのレベルの National ライダーでもこちらに参戦している者は多い。私のクラブレース時代の友人も一度 BSB Ducati TriOption Cup に参戦したものの、そのコストパフォーマンスの悪さとサポートレースの扱われ方から1年でクラブレースに戻った。確かに本物のプロではない上では楽しめる方が良いという考え方も有る。BSB参戦の大きな魅力は大観衆だが今年はそれもない。

 

苦難の週末

迎えた週末、Jasonは土曜からしか来られないらしい…。今回の参戦目的にズレてしまう上、シーズンにおいて Panigale の外に自分のバイクも走らせることは予算的に苦しい。Ducati を持って行きたいと言ったが準備が出来ていないと言う。腑に落ちないまま ZX10R と一緒に金曜入りした。気持ちが乗らない時は無理をしないに限る。そう言い聞かせて出走した僅か 2セッション目の第3コーナー。一瞬の気の緩みからオーバーラン。芝でフロントをすくわれて転倒、復帰以来初のクラッシュを喫した。やってしまった…。バイクは走れない状態で古傷の左肩も痛めてしまった。その日は早々に引き上げた。

 

土曜日の朝、Jasonと落ち合った。朝から士気を落としてはいけない。とりあえず昨日の転倒と体のダメージのことを言うのはやめた。ただ、メディカルへ行ってドクターから出走許可を得たものの、あれこれ取らされた態勢ではだいぶ痛みが有った。精神的にもつい 2週間前の BSB公式テストで得ていた好調ムードは消え、昨年このサーキットで味わった悲惨な感覚に支配されていた。そしてバンに戻れば後部に積んである ZX10Rのダメージが目に入る。シートレールも曲がっている。痛い出費だなぁ。やはり Panigaleで高いモチベーションのまま金曜の公式練習をして今日の予選を迎えたかった…。

 

朝 9:00からの10分間の Free Practice。たった10分では乗り換えたバイクに慣れることも叶わず、2:09.641、29台中の28位。続く昼前の 15分間の予選では 5秒以上縮めて 2:04.376だったが 35台中の 34位。そして迎えた午後の Race1 決勝。とりあえずバイクには慣れたので期待して臨んだが、予選レベルから上がらずにベストは 2:04.363。完走 25台中の25位。昨年と同タイムの場合の予想の通りに完走中の最後尾だった。順位はともかく、予選からタイムを上げられなかったことにおいて「慣れの問題ではないではないか。去年から成長していないのか。結局これが私の実力なのか」と思わされた。

 

今回のレースでは、おそらくレース人生で初めて周回遅れにされるおまけがついた。ただ私をラップしてぶっちぎりで優勝したのは昨年の BSB Super Stock 1000 チェンピオンで今年最高峰 Super Bike クラスに昇格した若干 21才の期待のホ ―プ、Ryan Vickers 選手。彼が刻んだ Fastest Lap はなんと 1:49.895。BSB Super Stock 1000cc のライダーも多く参戦していて 8位 までが昨年のベストラップを更新する中、わずか10周のレースで 2位に15秒の大差をつける圧勝だった。それにしてもこんなに BSB 1000ccライダーが参戦していたのか。考えることは皆同じだな。もはやそこはクラブレースでは無かった。

 

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食い下がった#54 ZX10Rも戦線離脱して最下位単独走行に…

         

泣きっ面に蜂 

悪いことは続く。チェッカー後のクールダウンでエンジンの違和感に気づいた。Jason に伝えると、チューンショップに電話を掛けて長い間話し込んでいた。そして「このままでは明日の出走はできない。ただ多分直せるから今から家に帰って修理をする。最悪もう1台のバイクを持って明日の朝戻ってくる」と言う。彼がそんな熱いことをしてくれるのか?ならば私も気持ちを切り替えて明日に備えよう。早々にホテルに戻った。…が、夕食を取っていると、「途中でバンが壊れて今家についた。明日は戻れない。」とテキストが入った。えっ… 受け入れるしかなかった。私も泊まらずに帰ることにした。

 

本来ライダー 2名体制を考えているチームには 2台のバイク(A, B)がある。今回は昨年私が復帰以来乗っていた A を使っていた。Ducati のレースバイクは信頼性が低いのでシーズンオフには必ずエンジンリフレッシュをしなければならないが、去年後半はライダーが私一人だったことで B がシーズン半ばから走行を重ねずに残っていた。去年の最終戦を前に A の疲れを感じて B に切り替えたのだが、Jasonは今年はそのまま B を私の正バイクとし、A をスペアバイクとして残すことにした。そして今週末は本番を来週に控えた段階として A を使ったのだが、やはり既に限界だったということなのだろう。

 

今思えば、Jasonが金曜日から来てくれなかったのも、日曜日に B を持って来てくれなかったのも、バイクの走行距離を抑えたかったからかな。このままでは B も心配だ。契約通りにエンジンリフレッシュ費用を払っている私としてはどちらかのリフレッシュはして欲しいところだが、2輪レースにおいてスペアを持たせてもらえるのは大きい。強くは言っていなかった。ただ、普通に自分でレース活動をしていても必要となる走行量を確保出来ないのでは本末転倒に思える。事実練習にZX10R を持ち出して転倒をし、今回の エントリーはエキストラレースとして自腹。ダブルコストのレース活動になっている。

 

なお、私がエントリーしたかった Big Twin クラスにはライバル数名が参戦していた。昨年の NLR Donington Round で Sam Middlemas と私がそうであったように、同じレギュレーションなら我々はトップ争いをする(Vol.28)。今回の優勝は TriOption Cupでもシングルフィニッシュ常連の Samuel Cox、2位は TriOption Cupで私と同じグループに位置する Richard Spencerだった。ただ、Richard のベストタイムは 私より 3秒も速い 2分1秒台。やはり私がこのトラックで速くないのだ。彼のライディングには勢いが有り、ヘアピンでは毎回フロントを上げながら立ち上がって私の自信喪失に追い打ちをかけた。

 

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兎にも角にもこうして 2020シーズン開幕へ向けた全ての予定が終了した。今回のレースは順調な準備の仕上げとしてレース感を取り戻して勢いをつけることが目的だったが、勢いをつけるどころか完全に失うことになった。初日早々に転倒をして体を痛めた。体調、気持ちとも上げられないまま迎えたレースでは、ライディングも順位もタイムも散々、挙句の果てにバイクも壊れた。Jason の不可解な判断や言動にも色々考えさせられた…。でも、ここであれこれ思い悩んでもしょうがない。開幕戦は1週間後に来るのだ。どうにかして気持ちを切り替えて、モチベーションを高めて臨まねばならない。

 

              ーグリッドー   ー決勝ー   

 Race1        34th           25位              

 Race2         ー               ー   

 Race3            ー               ー

 Race4            ー               ー  

 

次回は BSB 開幕戦 の様子です。Pre Season の Up and Down はどちらが本物か。