ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.9 第4戦 ブランズハッチ

Brabds Hatch Indy Circuit

ブランズハッチサーキットは、ロンドンの南東にある首都から一番近いサーキット。交通量にもよるがロンドン中心部から1時間ほど。歴史も深く、英国モータースポーツのメッカとして位置付けられている。

全長は GP コースが 4.207 km、Indy コースが1.929 km。一般的に長いコースがメインであることが多いが、ここはむしろ Indy コースが主流。オールトンと同じく、近くの古い街と教会の存在が影響しているもよう。イギリスらしい丘と林の中を縫うアップダウンのあるコースレイアウトだが、 Indy コースは更に高い位置にあるグランドスタンドからコース全体を見渡せる。

 

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好印象

2015 NLR Championship R4 Brands Hatch (Indy) は 6月13-14日に開催される。早いもので今回で前半戦が終わる。ここも私にとっては初めてのコース。しかも慣れを要するイギリスタイプのコースレイアウトだ。ただ、今回の Indy は2キロ程のショートコース(筑波サーキットより気持ち短い程度)で、イギリスタイプと言ってもオープンフィールドで見通しがよく、コツも掴みやすそうに思えた。

 

レースウィーク前に1日練習に行った。コースマップを見て予想していた通り、オールトンの時のようなどうしようもない感じはしなかった。その日は天気がすこぶる良く、むしろ、今日一日走ればとりあえずの状況までは絶対に間に合うと感じた。やはり、初めて訪れるときの天気は大切だと思う。ブランズハッチには好印象を持った。

 

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Legend クリスウォーカー氏のアドバイス

その日は初めてのコースとしてインストラクターを2セッション頼んだ。すると、なんと現れたのは去年10月に Snetterton でレースを勧めてくれたシニアインストラクターだった。彼も私を覚えていてくれて、彼の一言に背中を押されてレース参戦を決意したことや初戦の Snettertonで優勝したことを伝えると、「だろうね、驚かないよ」と言って喜んでくれた。

 

しばらくすると彼は、たまたまサーキットに来ていた現役 BSB ベテランライダーで元 BSB Super Bike チャンピオン、 Chris Walker(クリス・ウォーカー)選手を連れてピットに来てくれた。Chris氏は私と同じような年齢ながらいまだ最高峰クラスで活躍している Legend ライダー。今シーズンも Be-Wiser Kawasaki Superbike チームからZX10Rで参戦している。そう、同じベースマシンだから見てやってくれ、ということだ。

 

Chris氏は私のバイクを一目見るなり、ハンドル角の狭さを指摘してきた。私がその理由を言うと、待ってましたとばかりに、彼自身のバイクにつけているハンドルがその解決方法には良いと言ってパーツ入手先のURLを教えてくれた。また、私がドアストッパーで自作加工したシート形状にも気づいた。私が理由を述べると、分かる、分かる、いいのではないか、と言ってくれた。

 

その後ピットウォールから走りも見てくれて、最終コーナーを立ち上がってくる角度(方向)が良くない事を指摘してくれた。また、パドックから見渡せる各コーナーについて走るコツを教えてくれた。Chris氏からの数々のアドバイスには、この短いコースで差を生み出すポイントが詰まっていた。1日が終わるころ、Chris氏とインストラクターにコーラを持ってお礼を言いに行った。Chiris氏は喜んでくれて、何か有ったら連絡してと携帯番号を教えてくれた。

 

またこの日は 同じく現役 BSB Superbike ライダーの Rhalf Lo Turco (ラルフ)選手とも話が出来た。TVで見る彼はいつもブービーだが、ブラジリアンがたった一人、完全プライベートで孤高の参戦をしている姿は最高にカッコよく思えた。幸運にもまた一流の知り合い達が出来た。

 

 

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アップ&ダウン 

6月12日(金)の公式練習。Thomas が仕事の関係でドイツへ引っ越すらしく、このラウンドが今シーズン最後という話を聞く。マジか。。チャンピオンシップ独走中の彼、倒さなければならない彼が居なくなってしまうのか。これでは仮にチャンプになれたって真のチャンプではないではないか。今回は Thomas、Dani、Dave、Cookie、そして手堅くランク3位につけている Paul (Brown)、私、のクラストップランナー6人が全員が揃っている。今回決着をつけるしかない。皆、このラウンドが持つ意味を理解していた。

 

私は公式練習日のこの日も調子が良かった。セッションごとにタイムを縮め、自分でも乗れている感覚があった。そして迎えた翌6月13日、土曜日。朝の予選でポールポジションを獲得。やった。いけるぞ。Race1 はその勢いのまま Thomas を僅差で下して優勝した。Paul が3位。Dani は4位だった。とりあえずは OK だが、 レース中の Fastest Lap は Thomasだった。しっくりこない。完勝するんだ。今日はそうしないといけないんだ。

 

翌14日、日曜日の朝の予選も気合満点にポールポジションを獲得した。続く日曜最初のレース(Race2) は前日の Race1 のベストラップから2番手スタートだが、予選直後から降り出した雨で路面は完全ウェットになった。私を含めた誰もが Wet Race を覚悟して準備を終えていた。雨は気持ちの面が大きい。2日連続ポールとして速さ的には優位が有るのだがら大丈夫。落ち着け。

 

ところが、6月の強い日差しで路面がどんどん乾いていく。スタート予定時刻の30分前頃、皆が一斉にタイヤ交換を始めた。どうする。どちらか分からない時、もともと勝機が無い場合はギャンブルも有りだが、そうでない場合はライバルと同じにしておくのが鉄則。私も鉄則に倣った。前後のタイヤを交換し、サスペションのセッティングの変え、タイヤウォーマーを掛けて十分な温度に上げなければならない。落ち着いていた気持ちが吹っ飛んでバタバタになった。

 

他の全てのライダーにはヘルパーが要る。彼らには30分前が判断の限度時間だったのだろう。しかし自分一人の私には足りなかった。やっとバイクの準備ができ、急いでツナギを着てヘルメットを被って出走ゲートに着いた時は Gate Close の後だった。見ていた人たちが、Hiro、Pit Start でポイントを稼げ、と叫ぶ。だが何故かそれも認められずに失格となった。ライバル達の争いをフェンス越しに見ていると目頭が熱くなった。諦めるな。自らをリセットして残りの2レースに集中した。

 

完璧な勝利 

 

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Race3 は朝の予選結果からポールスタート。路面はほぼ完全にドライ。午前中のドタバタと感情の高ぶりを経て、逆に気持ち的に研ぎ澄まされた感覚が有る。このレースでは私のドタバタを見かねた他のクラスのライダーがピットボードを出してくれた。レッドシグナルが消えて一斉にスタート。調子がいい。全17ラップの折り返しの頃には2位に10秒以上の差をつけた。2番手を争っていた Thomas と Paul が11周目に絡んでクラッシュしたこともあり、結局2位に27秒という稀に見る大差をつけての勝利となった。

 

Fastest Lap も大幅に更新して、この短いコースで2番手に1秒近い差。BSB Superstock 1000でも予選を通過できるタイム。コースから帰還した後に入るバイクプール場。待ち構えていたマーシャルが「You are so fast」と首をゆっくり横に振りながら言ってきた。程なくプールに戻ってきた 3位になった Dani が、後ろの方から「BSBに行けよ!」と叫ぶ。完勝だ。

 

Race4 もポールポジションからスタート。Race3 の時と同じく調子が良い。ためらい無くアクセル全開とフルブレーキングをシンプルに繰り返す。アクセルを開けている時はずっとリアタイヤのうねりが伝わってくる。この走りが、このレベルにおけるとりあえずの完成系なのだと感じた。この感覚はいつまでも覚えていよう。またもや 2位に17秒の大差をつけて優勝した。2位は Dani に競り勝った Thomas。再び完勝した。

 

 

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全てのレースが終わって皆が家路につくころ、帰り支度を終えた Thomas が訪ねてきた。「今日のコンディションで49秒1はすごい。完敗だよ。」と言ってくれた。「これで君と競えなくなるのは悲しい。俺のモチベーションには君が必要だよ」と返した。握手をして別れた。最初に会った時も思った。彼は私よりはるかに若いが、渋くてカッコいい男だ。彼が居なくなってしまうのは本当にさみしい。 

 

               ーグリッドー    ー決勝ー

Race1           ポール            優勝
Race2          2nd           不出走   (ゲートクローズに間に合わず)
Race3           ポール            優勝
Race4           ポール            優勝

 

シリーズ前半戦が終わった。過去2戦うまくいかなかったが、今回の好成績を経てランキング上もンピオン争いに踏み留まった。何より、そのチャンピオンをフロッグにしないためにクラス最速を証明できたことがうれしい。次はシルバーストーンインターナショナル。ドニントンと同じくロンさんのスクールで走り慣れている。絶頂は続く。

 

 

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