ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.6 第1戦 スネッタートン 300

Sunetterton 300 Circuit

スネッタートンサーキットは、ロンドンから北東方向に2時間、広い平原の広がるイングランド東部の中心都市、 Norwich(ノーリッチ)の近くにある。300、200、100 の3つのレイアウトがあり、300 のコース全長は 4.779 km。コース幅は狭くもないがやはり2輪向きか。起伏の無い開放的なフィールドにストレートとコーナーが組み合わさるレイアウトは、イギリス的レイアウトのカドウェルやオールトンとは対照的。

 

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2015 NLR 選手権 R1 Snetterton 300 は 3月21-22日開催される。いよいよイギリスでの初レースウィークエンド。遠征前日の夕方、トランポにバイクや必要な荷物を満載にすると、昔、関東から仙台へよく遠征をしていた頃を思い出した。仲間と車を連ねて夜通し爆走し、朝方サーキット入り口の車列に車を駐めて仮眠した。ゲートオープンすると必ず寝過ごして動かない車があったっけ。楽しかったな。

 

十数年の時が流れ、いろいろな苦難もあったが、またレース活動が出来てうれしい。今はたった一人だけど、この北風に立ち向かう感じもよい。あしたのジョーの挿入歌、美しき狼たち。大好きな唄。

 

このアライは本物なのに 

1日早く木曜にサーキット入り。はじめてなので Test day (公式練習)前日に Track day を予約した。初めてまともに ZX10R を走らせる。やはり速さに驚く。フラットなシート形状が余計に恐怖感を引き起こしていると思った。どうしても気に入らず、その日の走行後はホテルに行かずに片道2時間を掛けて家に帰って処置をすることに決めた。

 

家の中にあった傾斜のある硬いゴム製のドアストッパーを3つ、シート下に並べるアイデアで角度をつけた。金曜の早朝にサーキットに戻る。公式練習。思った通りアクセルを開けることが出来る。ナイスジョブ、ドアストッパー! このコースは昨年10月に走っているので一応は知っている。どんどんバイクにも慣れて快調。

 

コース上で先月末に Donington で出会った Dani に出くわした。走行後「You are so liar! 」と言いながら走り寄って来た。セッション中に私を見つけて二度見したという仕草をしながら「You are absolutely liar! Where did that riding come from!?」と言ってきた。クーラントを噴射させてコケるような初心者のはずの私が、思いのほか良いペースで走っていたので驚いたようだ。私は「何も嘘なんて言ってないよ。本当に十数年ぶりのレースで不安なんだよ」と返した。でも悪くない気分。明日のレース、やってやる。

 

ところが!!  金曜日の夕方、明日のレースに向けた Screening Test(車検)で、私のAraiヘルメットに安全規格を満たす証拠の ACUステッカーが無いとして失格になってしまった。日本で買った本物の Arai だと何度言っても No。結局、翌日土曜はレースには出られず、ヘルメット探しに奔走することになった。ホテルへ帰るも悔しくて眠れなかった。

 

土曜はサーキットへは行かず、朝からスマホでバイクショップを見つけては電話を掛けた。他のメーカーが合うか分からないので Arai を探す。やっとサーキットから車で1時間ほどの Ipswich の街で真っ白の Arai Quantum を手に入れた。急ぎサーキットに戻った時は Race1 は既に終了していた。Dani は2位だったらしい。再車検で対応したスタッフがニヤニヤしていて腹が立った。明日は必ず勝ってやる。気合いが120%に達した。

 

熱いぞクラブレース!

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翌朝、いよいよ初陣。Race3に向けた予選でポールポジションを獲得した。イェーッ、勝てる。ただその日の1レース目(Race2)のグリッドは昨日のRace1のベストラップ順のため、出走していない私は最後尾スタートだった。その時はシステムをよく理解しておらず、何だよ!と半分切れていた私は怒涛の追い上げをした。

 

だいぶ疲れてきたころ集団に追いついた。この集団を全部抜いたら今回は満足としよう、と思ったところ、一台のバイクのテールにユニオンジャックが見えた。Daniだ。ってことはこれはトップグループ?追いついてバトルになる。この集団のライダー達はさすがに速く、何度か抜き返される。結局その集団の 2番手でフィニッシュした。2位か、と思ったところ、一人独走していたライダーがいて結果は 3位だった。

 

日曜の 2レース目(Race3)は朝の予選結果からポールスタート。スタートに失敗して5,6番手からの追い上げになる。トップは Race1、Race2で 2連勝の Thomas Webster。数周後 Thomas に追いつく、そして抜く。これで一安心、と思いきや、数ラップ後に1台に抜かれる。ユニオンジャック!? Daniだ。速い。残りラップも少ない。食いすがる。2つ先のコーナーで捉えようとホームストレートでスリップにつく。Dani は抜かれまいとブレーキを遅らせる、が、、、そのまま1コーナーで大クラッシュ。彼はリタイヤとなり、私はそのまま Thomas を振り切って優勝した。

 

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レース後 Dani に会うと「Good win!」と言ってきた。彼のバイクはリアサスのリンクが折れる大破で「今日のレースは終わりだ」と笑っていた。自分のガレージに戻ると、ある男がヘルメットを被ったまま駆け寄って来た。「ナイスレース!すごいペースだった!」と満面の笑顔で叫んでいる。黒いダイネーゼのツナギ、Thomasだ。渋くてハンサムな男だった。

 
その日の3レース目(Race4)も、Race3のベストラップ順として再びポールスタート。またスタートで出遅れてしまうも数周でトップに立つ。が、後ろから図太いバイクの音がし続ける。ツイン? いや同爆のR1、Thomasだ。離そうとするが離れない。最終ラップ、ヘアピンで痛恨のオーバーラン。コースアウトは逃れたが Thomas に抜かれてしまう。少し離される。ここまでずっとリードを保ってきて一度のミスで優勝をさらわれるなどあり得ない。食らいつく、テールトゥノーズにつめる。

 

最終左コーナーでインに飛び込んだ。抜いた、がトーマスも被せてくる。バイクがぶつかる。少しはらんだが曲がれた。あとはホームストレートのみ。行ける。向きを変える、すると左側からまた図太い音。Thomas?なぜ左?Aprilia RVS4 を駆る David Gregory だった。ずっと3位につけていたらしい。漁夫の利とばかりに並びかけてくる。負けじとアクセルを開ける。フロントが上がる。まだ前。同じ加速感。勝てる。そのままゴールラインを超えた。

 

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ラウンド総括

            ーグリッドー    ー決勝ー

Race1          不出走           不出走     (ヘルメットの車検失格により)
Race2          最後尾             3位
Race3          ポール            優勝
Race4          ポール            優勝

 

Race1はまさかのヘルメットで失格。Race2は最後尾から怒涛の追い上げで3位。Race3,4はポール to ウィン、特にRace4は最終ラップ最終コーナーで決めた。なかなか劇的な展開に、新参の Japanese が速いらしいという噂がパドックに広がったよう。タイヤサービス Parkitt Racing Service 代表の Toni に「君が Hiro か。パドックは君の話で持ち切りだよ」と言われた。誇らしく思えた。

こうして夢の海外初レースは終わった。これがイギリスのクラブレースか。みんな熱いじゃないか。私がこれまでのレース人生で経験したどの Race Weekend よりもハードだったが、ひとまずは満足感と達成感に包まれた。