ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 50才バイク好き。本場のプロ選手権に参戦。

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.29 2019 BSB TTアッセン(Ducati Cup R7)

 

TT Circuit Assen

アッセンサーキットは、オランダ北部のややドイツよりにある。国土の中央付近に位置する首都のアムステルダムからは、北東へ車で 2時間半ほど。サーキットの歴史は古く、最初にレースが開催されたのは 1925年。そして、1949年に 2輪世界選手権(現 Moto GP)が始まって以来、一度も休むことなく開催が続けられている唯一のサーキットである。

 

全長は 4.545 km。平坦なコースは、高速セクションと低速セクションを併せ持つ。もともとは現在の第 1コーナーの先に広範囲のループが有ったが、2006年の改修で短縮された。代わってスタンドが新増設され、伝統のオランダ GP には毎年延 30万人もの観客が訪れる。(航空写真でもグラベルを湛えた手前の新設エリアが良く分かる)

 

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バイクには旅情

次の BSB アッセンラウンドは 9月20-22日の日程で開催される。BSB は全英選手権だが、毎年オランダのアッセン TT サーキットでのラウンドが組まれている。いよいよだ。選手権の一環として国外のサーキットへ行く。しかもあの有名な TT アッセンにレースしに行くなど夢のようだ。TV で見たアッセンでの数々の名勝負を覚えている。それらはいつも曇り空の下だった印象も有るけれど。

 

オランダへはフェリーで渡る。フェリー会社の Stena Line が BSB オランダラウンドの冠スポンサーになっていることでチケットは Free。ここは私にとって未知のコース。レースウィークエンドは 9月20日(金)からだが、17日(火)からの 2日間の一般のスポーツ走行に参加するために 16日(月)のフェリーを予約した。BSB では、レース 1週間以内はそのサーキットでのテストが禁じられているために愛車 ZX10R を持って行った。

 

朝 6時にロンドンの家を出て、MSS のあるコルチェスター近くの Harwich 港から 9時に出港。フェリーは旅情を掻き立てる。私は北海道ツーリングは断然に大洗港からのフェリー派だ。そして船に揺られること 7時間。17時過ぎ(時差がある)にロッテルダム近くの Hook 港に到着。それからひたすら高速を北へ走る。下船に時間を要したこともあって予定より 1時間ほど遅れた 22時近く、アッセンから 30分ほどの小さな街、Norg のホテルに到着した。

 

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ホテル併設のレストランは閉まりかけていたが、オーナーのご厚意で食事にありつけた。おいしい。大陸はイギリスより食事がおいしいことはよく言われるが、イギリス人と同じアングロサクソン系の国でもそうなのだな。地ビールもおいしかった。街はきれいで、英語もほぼ通じる。道路標識は読めないがナビがある。問題なく過ごせそうだ。アッセンに近いからか、ホテルのオーナーはバイクレース通。その後も良くしてくれた。

 

信じがたい愚かなミス 

9月17日(火)。早朝にサーキットへ行く。巨大なスタンドが見えてきた。アッセンだ。入口が分からずに 15分ほどロスしたが、何とかパドックに入れた。でも何だか様子がおかしい。通常 Track day では、7時半からの Sign on に向けて 7時にはバタバタし始めるのだが、まったく静まり返っている。シャッターが半開きのピットガレージの中にはバイクが見えるし、パドックには多くの車が駐まっている。だが人影が無い。あちこち歩き回って Sign on の場所を探す。

 

8時半過ぎになってようやく、自分が日程を 1日間違えていることを理解した。今回の練習走行は 9月 17-18 ではなくて 16-17。皆は昨日 1日の走行を終えて、今日は 9時からのスタートまでゆっくりしていたのだ。しまった、2日間あればなんとかサーキットを攻略できると思ったのに 。。仕方がない。まだ 1日ある。気持ちを切り替えて急いで手続きを済ませ、No Limits Track day が確保しているガレージに ZX10R を割り込ませてもらった。

 

いよいよ出走、というところで雨が降り出した。しかも今日は寒い。初めてのトラックを、このコンディションの中でレーサー 1000cc で出る気はしない。昨日、晴天の下で存分に走り込んだ他のライダーもほぼ出ない。昼頃に雨が上がってコースが乾き出したが、程なく、また雨が降り出した。Dutch Weather だ。結局この日は最後の 2セッションを走れただけになった(2セッション目は雨で途中終了)。なんてこった。コース幅やレイアウトは何とか分かったが、それだけだ。これで本番を迎えるしかないのか。信じがたい愚かなミスだった。

 

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ぶっつけ本番 

9月20日(金)。BSB アッセンラウンド開幕。今ラウンドにはヨーロッパ選手権のいくつかのクラスも組み込まれている。Ducati Cup を含めたサポートクラスのスケジュールはいつにも増してタイト。金曜日の午前中に 25分間の Free Practice があって、午後はもう 25分間の予選。そして土、日は Warm up セッション無しでいきなりのレースが組まれている。Warm up 無し。その日初めてバイクにまたがってそのままレース、というのはなかなかきつい。

 

ほぼぶっつけ本番の金曜日午前中の Free Practice。タイムは 1:53.462、順位は 28台中の 23位。このタイムがどういうものかすら分からないが、トップから は 11秒遅れ。初戦で初めて走った時の 12.9秒差に次ぐひどさ。だいぶまずいことは分かる。

 

それでも、午後の予選では 1:48.580まで伸ばして 28台中の 21番手に上がった。Free Practice から約 5秒、トップとの差も 3.6秒詰めた。うれしいが、またもやプロの世界において準備不足を露呈するような詰め方は恥ずかしくも有る。このトップと 7.4秒差は、2戦目のカドウェルパークの予選の時と同等。初めてのトラックで、レース復帰したスネッタートンからの上達を再現しているかのよう。

 

ちなみに Dani は 1:45.310で13番手。私より 3秒少々速く、トップからは約 4秒遅れ。私のこのトラックの持ちタイムは無いが、今回も同じく Dani のタイムが目安になるだろう。彼もあと 1秒は詰めてくるとして、1分 44秒台あたりが目指すべきタイムか。

 

何とかせねば

予選後に Ducati Cup のチェアマンが突然ミーティングを設けた。一部のトップライダーが下位グループのライダーとコース上で絡み、 115%タイムで区切って欲しいと苦情に似た要求をしたらしい。トップから 7.36秒遅れの私のタイムでさえ107%だから、確かに115%は相当に遅いが、下位グループの何人かは超えてしまっているよう。そして該当する何名かは、明日の決勝は途中(周回遅れになる前)にピットインすることになった。

 

でもどうなのだろう。それでなくても Ducati Cup の参戦を 1年で止めるライダーが多い話は聞いている。参加台数が減っているのに、このような雰囲気が続けば更に減るだろう。その一人である知人は、撤収の理由に、サポートレースの扱われ方や走行時間におけるコスパを言っていたが、今回のようなことでやる気をなくしたのかも、と感じた。ちなみにその知人がエントリーした 2017年の出走台数は、毎戦 50台近くあったそうだ。私もおちおちして居られない。ホテルに帰ってからもコースマップを片手に You Tubeオンボードビデオを見ながらイメージトレーニングを続けた。

 

このコースは私にはスペシャルだ。来る前、James Ellison 選手を含めた多くのライダーから、アッセンはフラットで高速セクションと低速セクションが有り、スタンドが大きくてシルバーストーンに似ている、と聞いていた。しかし私には似ているのは景色だけで、コースレイアウト、すなわち走り方は全く違うと思われた。最初の新設タイトセクションは無理やり感が有って目がまわる。高速セクションはバンクが有ったり、微妙に曲がっていたりして、通常のそれと違ってシンプルに走れない。

 

特に前半と後半の 2本のストレートからのコーナリングが特別。ストレートと言ってもどちらも最後の方で右に緩くカーブしていて、ハイスピードではノーブレーキ、フルバンクの右コーナーのようになる。そして、その後すぐに現れる左コーナーには、このハイスピード右フルバンク状態から、ブレーキング&シフトダウンと切り返しを同時に行いながら入ることになる。これまで経験したことの無いレイアウト。まったく要領がつかめない。でもだからこそ、今の私は、ここを攻略するだけで秒単位で詰まる気もした。

 

とりあえず 

9月21日(土)。Race1 は 14時から 10周で行われた。結果は完走 20台中16位。本当は最終ラップに #8 Richard Spencer を抜いたので 15位、1 ポイントゲットのはずだった。しかし、その前の周に抜いた #50 Matt Stevens が最終ラップに転倒した影響で赤旗レース終了となり、9周終了時点の順位となってしまった。レース後、Richard のチームメンバーが申し訳なさそうに「最終ラップの君の走りには舌を巻いたよ」と言っていた。幻の 1ポイント。

 

私のレース中のベストラップは 1:49.078。予選より遅かった。大きなタイムの短縮を期して臨んだ中で、更新すらできなかった事実は、幻の1ポイント以上に不快だった。レース後半、#6 Peter Hasler や Matt、Richard といった後方集団の何人かを抜いたことはせめてもの救いだが、何名かには先を行かれた。前戦で獲得した後方集団トップの座。次のステップに進むには、当たり前のように維持しなければならないと思っていたその座。守れなかった。

 

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Dani はオープニングラップで転倒リタイヤした。また、昨年のチャンピオン、元 GP ライダーの Rob Guiver はレース前の時点でランク 2位につけていたが、トップ争い中の黄旗無視で失格になった。最終 2ラウンドにタイトル防衛を懸ける彼には痛恨の展開。テントが隣だったので「たまに見落とすことは有るよね。気を落とさずに頑張って」と声をかけた。「争っていて見えなかったんだ。タイトルは絶望的だけど頑張るよ。ありがとう」と返してくれた。チャンプらしからぬ素朴な感じの人だった。

 

9月22日(日)。Race2 は 11時40分から10周で行われた。結果は完走 20台中 17位だった。ベストタイムは 1:48.299。17位は Race1より悪い。レース Fastest Lap との差の 6.86秒も、前のランド終了時より半秒ほど開いてしてしまった。7月のレース復帰からの復活における停滞。ただ Race1 よりは満足感があった。僅かでもタイムを更新して今週末ベストで締めくくれたからだ。停滞の中でも上向きで終われたのは、ここは初めてなのでしょうがないと考えて、次へのモチベーションを保てる。

 

全く知らないコース、ほぼぶっつけ本番の状況で、後方集団の中でバトルができるまでに持ってこれたことは確かに上出来と言えるかもしれない。毎度のことながらトップ数人のタイムが速すぎるが、今回のリザルトを見ても、私の 1周のアベレージスピードをあと 3秒削れればシングルフィニッシュになれる状況。私は、それくらいの向上の余地は十分に残っていると思っている。次はよく知っているドニントン。そこでの結果が私の今後を決めることになろう。

 

             ーグリッドー   ー決勝ー   ーRace Speed (優勝者比)ー
Race1        21th           16位         92.96%
Race2        21th           17位         95.43%    ※途中に Safety Car Situation 有

 

ちなみに Dani はバイクに昨日の転倒の後遺症が残っていたようで、Race2 も中盤にリタイヤした。2日連続のリタイヤ。彼はこのラウンドはうまくいかなかったようだ。昨日会話した Rob Guiver は、Race2 でも Fastest Lap 1:41.440 を記録したが、レースでは 2秒ほど届かずに 2位だった。下の写真は #82 Luke Jones が Rob を振り切ってチェッカーを受けた瞬間。伝統のアッセンサーキットには、この日もこのような大観衆が訪れていた。

 

 

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