ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 本場英国でバイクレースに挑戦

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.34 参戦決意! しかしパンデミック…

 

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2020 シーズンへ向けて

最終ドニントンラウンドから 2ヶ月ほど経った 12月のはじめ、Jason から「私が望むなら継続参戦 OK 」の連絡が来た。2019シーズンは後半だけの参戦だった。目に見えた貢献はしていない。しかし、明らかに向上し続けていること、4戦を通しての参戦態度、そしてお金に対するマナーの良い点が好まれた。私が望むなら、という表現が微妙だが、それが現実であり、シート枠を優先的に与えてもらえただけでも有難いと思うべきだと思う。

 

ただ返事は少し保留させてもらった。その時私は仕事の方で、参戦断念が妥当と思えるほどの問題を抱えていた。プロレベルだ何だと言っても、私にとってのレース活動は趣味。生活を脅かしてまでは…。ただ頭の中では半ば諦めても、なかなか断念の連絡はできなかった。どの道私はやる。自分自身に怪我や大きな出費が生じるリスクを負う無茶をしないという条件を設けて、JWF Motorsport と 2020 シーズンのフル参戦契約をした。

 

同時に Dani の引退を知った。驚かなかった。彼も小さな会社を経営し、小さな子供の居る家庭を持つ。危険も出費も伴うレースの継続には大きな馬力が要る。 彼は Ducati Cup で既に 3シーズンを過ごして成長台形の上に居た。自分の限界を悟りつつある中でまさかの 2位表彰台獲得。それ以降は歯車が狂って最終 2ラウンドに至っては全レースリタイヤ。大きな達成感を得た彼が、空回りの中でモチベーションを失っても不思議ではない。

私にはもちろん残念なこと。BSB 参戦以降ずっと、本来は後ろに居るはずの相手としてベンチマークにした。来シーズン前半の目標においても基準となる彼は必要だ。それに、彼とは私がイギリスではじめて自分のバイクでサーキットへ行った時からの縁(Vol.5)。寂しい気持ちも有る。でも彼はまだ 30代半ば。私が 40代半ばでレースに戻ったように、またいつだって戻れる。今は、彼の今後の生活の幸運を祈ろう。Good Luck Dani!

 

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参戦を決意した私の方は、去年と同じ轍を踏まぬように準備を進めなければならない。よく言われるが、歳を重ねると太りやすく、戻すのは大変。一度休んで体を急に作り直そうとしたって去年のように怪我をするだけだ。最終戦の後も Gym 通いを続けた。クラブレース時代、「もういい歳だから」と謙遜したら、やけに真顔で「歳は言い訳にならない」と言い返した奴が居た。彼は自分がそうなった時、私に敬意を抱いてくれることだろう。

 

ライディング向上のための準備もしたい。まずはアクセルやブレーキングにおいて無駄の無い走りをすること(Vol.33)。そのために Data Log システムを装備したいと訴えた。しかし Jason は、レースウィークエンドに使用禁止な物への予算は無いと言う。私は、このデータシート 1枚が大きなモチベーションになることを知っている(Vol.2)。練習の時だけでも十分。自分で出費するか。でもワンシーズン、しかもチーム所有のバイクに?


チームは海外テストをしたり、撮影会をしたり、チームウェアを揃えたりに熱心。私には、バカンスのようにスペインテストに行くよりも、その予算で Data Log システムを得て、ラウンドのあるトラックでテストをする方がロジカルに思える。メカニックもいない弱小チームにおいては、Jason にそのロールを受け持って欲しいとすら思っている。セッティングを向上させようと思えば、彼自身が Data Log システムを欲っしても良いはず。

 

一方で私の貢献も必要だ。好きでやっていることに対して、俗にいうスポンサーを募る気は無いが、せっかく得たこの立場。かつては盛況を極めた日本のバイク関連メーカーの再興のお手伝が出来ればと思っている。いくつかの会社に、BSB パドックでの使用を前提に現物支給(割引含)の可能性を伺ってみた。Win Win の発想。ブレーキパッドメーカーのベスラさん、ツナギメーカーのヒョードさんからご賛同を頂けた。お礼もかねて紹介。


ベスラさんは主にブレーキパッドを製造するメーカー。AMAでの実績があり、日本でもレース界を元気にサポートしている ↓↓↓。チームメイトの Bruce を通じた試用の機会で良い感触を得た。チームには来シーズン Brembo Z04 の選択肢が有るが、私は Vesrah ZZを希望した。制動力やコントロール性能は同等だが、握り幅の変化が少ないことが理由(Z04 には悩まされた)。Brembo と同等の製品として UKライダーにお勧めしていきたい。

 

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HYOD さんは良質なツナギを製造するメーカー。現在の私のグローブは、英国のショップで 20個以上も試着して満足できた僅か 2つの内の1つ。しかし HYOD のグローブは、一時帰国の際に試したその瞬間にその品質を確信できた。英国でも有名な、加賀山、清成、芳賀の 3選手 ↓↓↓ が HYOD フルサポートライダーながら、こちらで HYOD を着るライダーは見たことが無い。とにかく製品が良いので、少しでも協力させていただけたらと思う。

 

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2月も中盤になった。開幕戦のシルバーストーンは 2020年4月10日(金)から。あと 2ヶ月を切った。体はだいぶできている。初めの 4戦は初めてのコースになるが、レースから 3年近くも離れていた去年とは違う。天候が落ち着く 3月下旬から練習に行って、出来る限り、去年の最終戦の状態に戻して開幕を迎えたい。最終戦と同じドニントンパークで、3月23日に初練習を組んだ。僅かだが、いくつかの会社と現物サポートの交渉も続けた。

 

想定外のパンデミック

そんな時、中国で新型ウィルスが発生した。私はアジア人。サーキットへ行っても気まずいだろうか…。ところが、思いもよらず感染の舞台がヨーロッパに移った。イギリスでも様々な制限が始まり、BSB も 4月の第1戦と 5月頭の第2戦が延期になった。3月23日の初練習も中止になった。そして 3月24日にはロックダウンが始まった。Gym どころかまともなトレーニングもできなくなった。現物サポートのお伺いも続けられるわけがなかった。

 

イギリスの動きが止まったことで、私の仕事への影響も深刻になった。運営する《ロンドン・アップルハウス》は、日本人の皆様を対象にした大人向けシェアハウスグループ。渡英の目的が無くなった方々からキャンセルの連絡が相次いだ。皮肉にもロックダウンと同時に感染は拡大し、滞在中の方々も切り上げて帰国した。幾つかのハウスが空になった。ひと月も経てば落ち着くに違いない。固唾を呑みながら各ハウスの衛生管理に努めた。

 

しかし状況は好転せず、 BSB から 5月末の第3戦と 6月中旬の第4戦の延期がアナウンスされた。延期って…。イギリスの気候では 2輪レースは 10月一杯が限度。4ヶ月の間に 12ラウンド(Ducati はうち 8ラウンド)を行うというのか。過去 2年は大けが、今年はパンデミック。気持ちを奮い立たせるたびに道が閉ざされる。仕事もレースも一体どこに落ち着くのだろう…。今日もロンドンの街のランドマークは、青くライトアップされている。

 

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ただ私の経験では、人生はそもそもうまくいかない中で進むもの。Chin up! この機に RMA (Romanitic Motorcycle Adventure) の HP を更新しよう。RMAは、英国の一味違うバイク活動を紹介し、皆さんのバイクロマンのお手伝いをしている。物事のレベルは、その瞬間を垂直的に(バイクなら速さ等で)測る見方もあれば、時間やフィールドなど水平的に測る見方もある。皆さんのフィールド軸的なレベルを高めて頂くことを企図している。

 

レーサーの私は多少の垂直レベルは有るが、フィールド軸的な水平レベルはかなり低い。オフ車もトライアル車も知らないし、メカもさして詳しくない。マン島TT を観に行ったことも無い。フィールド軸では、私よりハイレベルにバイクに接している方は山ほどいると思う。一方で、時代をまたいでライディングの探求ができる(Vol.33)。垂直レベルでは遥かに及ばないバレンティーノ・ロッシと同等の時間軸レベルがあるのは感慨深い。

 

このブログの古い時代の記述を理解する皆さんの時間軸レベルもだいぶ高い。例えば、BSB 監督の Jason は、ドニントンの廊下のモロという写真を見ても、それがレース史を語る上で欠かせないキング・ケニーだと分からなかった (゚゚;) MSS チーフメカニック、現代のライムグリーンスーパーバイクを知り尽くす 30代の Tom は、私が Gpz 750F(Vol.3)には当然 KER KER マフラーを入れてると自慢しても、KER KER を知らなかった (゚゚;) 

 

私はイギリス中のサーキットに数えきれないほど通ったが、一度も日本人ライダーに会ったことが無い。でも最近中国人は見かける。史上の名だたる黄色人レーサーはほぼ日本人だが、いずれ垂直レベルでは抜かれてしまうのかもしれない。ただ、日本にはバイク文化の長さとフィールドの広さがある。水平レベルはそう簡単に凌駕されない。バイクを愛する日本の皆さんには、これからもバイクロマンを探求し続けて欲しいと思う。

 

All it needs is courage, imagination, and a little dough. (by Chaplin)

人生を豊かにするものはロマンと勇気!あとはほんの少しのお金です。 (管理人訳)

 

 

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