ロンドン発! 本場イギリスでバイクレースに挑戦

ロンドン発! 50才バイク好き。本場のプロ選手権に参戦。

身の程知らずのバイク好きによる、40代からの英国バイクレース参戦記です。

Vol.4 チャンピオンマシン

Fireblade or ZX10R ? 

2014年11月、そろそろバイクを何とかしなくてはならない。勝手の分からない場所においては雑誌やネットよりも人伝の方が確実だろう。ロンさんのスクールでいつも一緒に走ってくれていたインストラクター、 元ヤマハワークステストライダー Alan (Batson) さんに声をかけた。間もなく、彼のインストラクター仲間が Fireblade ↓↓↓ を売りに出しているのでどうか、という連絡を受けた。年式は少し古いが、前後オーリンズサス、クウィックシフターやパワーコマンドも備わるフル装備。信用の置ける出所。料金も安い。しかも乗り慣れているFireblade。私には妥当なところか。

 

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決定の前に一応ダメもとでPaul が紹介してくれた SMT Racing の Alec Tague氏にも連絡を取った。電話口の彼はやはり「レース経験は有るの?10年以上前?今のレーサー1000ccは全く違うよ? 600ccとかからがいいんじゃない?」みたいなことを言って、最高レベルマシンをいきなり電話してきた個人へ売却することを躊躇していた。ただ私がロンさんのスクールで Fireblade には乗り慣れていることを話すと、奇遇にも Alec 自身が昔そこでインストラクターをしていたらしく、私を知るインストラクター(Mr. Joe)に電話をかけ、その後「ノーマル車とは違うよ」と言いながらも売却可を伝えてきた。

 

気になる代金だが、Paulからも1年落ち1000cc ストックマシンの相場は聞いていた通り、このスペシャルマシンも驚くような価格ではなかった。スペアホイールなどを含めて新車価格+α 程度といったところ(依然として小さいお金ではないが)。Alecによれば、普通のストックレーサーバイクなら例え多少のパーツが組み込まれていたとしても同年式のストリートバイクより値が落ちるとのこと。ゆえに毎年の買い替えに苦労している弱小チームには、シーズン前に取り外した保安部品をシーズン後に付け戻して、一般市場で新古バイクとして売っているところも多いのだとか。何ともあこぎな商売をするもんだ。Alecから程なく、住所といっしょに写真が送られてきた ↓↓↓ ヤバいぞーこれは。

 

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Alanに相談した。初め彼は「俺ならBSBマシンには手を出さない。ダメージを隠していることも多いし、当時のスペックのままなわけがない」と言っていたが、Alec や Joe の話をすると「それならある程度信用はできるからそれでもいいんじゃないか。初めのバイクとしては値段も安い Fireblade を勧めるけどね」とのことだった。少し迷ったが、今回の ZX10R はAlec曰く1台目をシーズン後半の大クラッシュで廃車にした後の2台目で稀に見る無転倒車とのこと。ダメージの心配はない(さすがに全くの無転倒かくらいは観ればわかるだろう)。それに今からその次のバイクの買い替えなんて勘定できない。今回の参戦決意の信条通り、『言い訳なし』のマシンを選ぶことにした。まあ、この2つの写真を並べられたらおのずと答えは決まってしまう。バイクは相棒だ。眺めながらため息が出るほど好きでいたいと思う。Alecに購入意思を伝えた。

 

程なく Manchester の先までバイクを買い取りに行った。SMT Racing は鉄鋼メーカーの社長が好きで所持しているレーシングチームで、その年はスウェーデン人ライダー の Filip Backlund選手を擁して BSB Superstock 1000 チャンピオンを獲得した。広い工場の敷地内に巨大なモーターホームトレーラーが有って圧倒された。SMT Racing は Michael Rutter 選手を擁して数か月後のマカオレースに参戦するとかでマシン関係の一切がそこに無かったのは残念だったが、こうした規模でバイクレースをサポートをする中小企業が有ることに驚かされた。

 

Alec からマシンに関していろいろな説明を受け、日頃のメンテナンスの拠り所として、イギリスにおける Kawasaki系レースショップでは最も有名なお店の一つ、(後々いろいろお世話になる)MSS Perfornance Colchester Kawasaki 代表の Nick Morgan氏を紹介してもらった。Alanの言うとおりに、きっと見えない高価なスペシャルパーツはいろいろ取り外されているとは思うものの、中古レースバイクなのに傷一つなく、Alecの言うとおりに無転倒は本当のようだ。私には完璧すぎるバイクを手に入れてしまった。我ながら思い切ったことをしたもんだ。レースバイクを手に入れたことで、いささかの躊躇があった来年のレース参戦はほぼ決定的となった。

 

その他の準備 

レース参戦が確実になったことで、続く3ヶ月の間に次々にその他の準備を進めた。トランポは必要時のレンタルも考えたが、日頃の仕事上も有れf:id:RMARacing:20200412223608j:plainば便利だったので安目のものを購入した。また、ちょうど引越しを考えていたのでガレージ付きの家を選んで引っ越した。荒れ放題のガレージを整理して必要な工具やケミルを揃え、バイクの保管場所と整備場所を確保した。うーん、うれしい。バイク好きや車好きの方ならお分かりいただけると思うが、ガレージを持つのも男の夢の一つ。長年の夢がかなった。

 

そして遂に、ロンドンの北、St. Albans という街にある NLR の Office を訪れて全戦のエントリーをした。感じのよいスタッフが見慣れないアジア人の訪問者にも優しく対応してくれた。No Limits Racing Championship のクラス分けは、Clubmanライセンス保持者以上を対象とした Super Pirelli 1000&600(混走)、ライセンス制限の無い No Limist Cup 1000、同 600、New Commer 1000、同 600、2 Stroke&Twin、そして耐久の7クラス。至ってシンプル。そして ZX10Rで英国初レースに臨む私は New Commer 1000クラスになるとのこと。実質レース経験者の私は上位クラスの No Limist Cup 1000を希望したが、既存のメンバー数に対して新人は少ないので New Commer クラスもほとんど既存メンバーで、上位のレベルはさして変わらないとのこと。それならいいか。メンバーシップカード、New Commer 1000cc クラスのレギュレーションブックをもらった。

 

バイクは一通りのメンテナンスのために紹介してもらったコルチェスターにある MSS Performance に持ち込んだ。レギュレーションブックも持って行ったが、BSB Super Stock クラスのレギュレーションは厳しくてキャリパーやホイールを含めて基本パーツはノーマル。むしろクラブレースの方が自由なので、何かを変更する必要はほとんどなかった。ただ、SMTカラーの美しいカウルは外して、ツナギの色に合わせて白/黄/黒にペイントした FRPフェアリングを装着した。そのまま使うことも考えたが、いい歳のライダーがあたかもBSBチームお抱えの期待のホープみたいになってしまうのはさすがに気が引けた。ちなみに、MSS Performance も、MSSが入る Colchester Kawasakiもすごく立派だった。私は日本で何かとカワサキ車に乗っていたが、こんなグリーンショップは見たことが無い(写真では見えないが1階は後ろへこの3倍広がっていて、さらにその先にMSSがある)。やはりイギリスではこの業界にしっかりお金が廻っているようだ。

 

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ACUライセンス、レースバイク、トランポ、保管場所、工具とケミカル、ツナギ&メット、エントリー、これでとりあえずレース参戦に必要な全ての環境が整った。半年の間にずいぶん劇的に推し進めてしまったものだ、と我ながら驚く。節約できるところはしたがそれでも大きな出費だ。でもこれまで10年以上大きな出費を伴うことはせずにきた。レース活動中も他は何も要らない。老け込んでしまう前にロマンを追いかけたっていいよな。いよいよ ZX10R 初ライドの日が近づいてきた。